エールリヒの法社会学基礎論を読む前に
社会学と法学の関係について予備知識を得る
エールリヒは、「法社会学」という学問分野を切り拓いた学者として知られています。彼の思想を理解するためには、まず「社会学」と「法学」の関係性について理解を深めておく必要があります。伝統的に、法学は、国家が制定した法規範を解釈し、体系化することを中心的なテーマとしてきました。一方、社会学は、人間社会の構造や機能、変化の法則を探求する学問です。
エールリヒは、法を単なる国家の命令として捉えるのではなく、社会の中に自然発生的に生み出される「社会生活の事実」として捉えました。彼の思想を理解するためには、法を社会現象として捉える社会学的視点が必要となります。そのため、社会学と法学の関係性について、基本的な知識を身につけておくことが重要です。
19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパ社会について理解を深める
エールリヒが活躍した19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパ社会は、産業革命の影響により、大きな変革を遂げていました。都市化や工業化の進展に伴い、伝統的な社会秩序が崩壊し、新たな社会問題が次々と出現しました。
エールリヒの法社会学は、このような時代背景の中で生まれました。彼は、当時の社会状況を背景に、近代法の限界を指摘し、新たな法のあり方を模索していました。彼の思想をより深く理解するためには、当時のヨーロッパ社会が抱えていた問題や社会構造の変化について理解を深めておくことが重要です。
法実証主義の考え方について知っておく
エールリヒの法社会学は、法実証主義への批判として生まれました。法実証主義は、法を国家によって制定された命令と捉え、法の妥当性をその制定過程に求める考え方です。法の内容や妥当性は、道徳や正義といった価値判断とは切り離して考えられるべきだと主張します。
エールリヒは、法実証主義的な法観を批判し、法は社会生活の事実から生み出されるものだと主張しました。彼の思想を理解するためには、法実証主義の考え方とその問題点について知っておく必要があります。