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ラシーヌのブリタニクスを読む前に

## ラシーヌのブリタニクスを読む前に

ブリタニクス:権力、情熱、裏切りの悲劇

ジャン・ラシーヌ作の『ブリタニクス』は、ローマ帝国の黎明期を舞台にした、権力、情熱、裏切りの物語です。紀元69年、皇帝クラウディウスの死後、ネロが帝位を継承します。物語は、ネロが権力を握ってから4年後、彼の義理の弟ブリタニクスに対する猜疑心と敵意が頂点に達したときに始まります。

歴史的背景:ネロとブリタニクス、権力の駆け引き

『ブリタニクス』をより深く理解するためには、物語の背景となる歴史的知識が不可欠です。ネロは、ローマ帝国第5代皇帝クラウディウスの継子であり、実母アグリッピナによって帝位につけられました。一方、ブリタニクスはクラウディウスの実子であり、本来であれば帝位継承権を持つ存在でした。ネロは、自身の立場を守るため、ブリタニクスを常に警戒し、やがて彼を排除しようと画策します。

劇中で描かれるネロは、冷酷で権力欲にまみれた暴君として描かれています。一方のブリタニクスは、若く純粋で、ネロの陰謀に翻弄される悲劇の主人公として描かれます。

登場人物:愛と憎しみの複雑な関係

『ブリタニクス』には、ネロ、ブリタニクス以外にも、物語に大きく関わる登場人物がいます。ネロの恋人ジュニー、ブリタニクスを愛するネロの妹オクタヴィア、ネロの家庭教師であり、後に彼の政治顧問となるセネカなどです。

登場人物たちは皆、愛憎、嫉妬、野心といった複雑な感情に揺れ動き、物語に深みを与えています。例えば、ジュニーは当初ブリタニクスを愛していましたが、ネロの権力と魅力に惹かれていきます。オクタヴィアは、兄であるブリタニクスへの愛情と、ネロへの政治的な思惑の間で苦悩します。

古典主義演劇の様式美:三一致の法則と韻文

『ブリタニクス』は、17世紀フランスで確立された古典主義演劇の様式に則って書かれています。古典主義演劇の特徴の一つに、「三一致の法則」があります。「三一致の法則」とは、「時間の統一」(劇中の時間は24時間以内)、「場所の統一」(舞台は一箇所)、「 Handlungの統一」(筋は一つ)という三つのルールを守って作品を構成するというものです。

また、『ブリタニクス』は、韻文で書かれている点も特徴です。フランス古典主義演劇では、韻文を用いることで、作品に格調と美しさを与え、登場人物の感情をより効果的に表現していました。

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