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ワイルドのサロメから学ぶ時代性

## ワイルドのサロメから学ぶ時代性

世紀末の退廃と不安

オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」は、1890年代のイギリスで発表され、大きなスキャンダルを巻き起こしました。聖書に登場するサロメを題材としながら、退廃的で官能的な世界観を描いた本作は、当時のヴィクトリア朝社会の道徳観念とは相容れないものでした。世紀末のヨーロッパは、政治的、社会的な不安定さが増大し、既存の価値観や道徳観念が揺らいでいました。「サロメ」は、そうした時代の雰囲気を反映した作品と言えるでしょう。

女性の欲望の表象

「サロメ」で描かれるサロメは、自身の欲望に忠実で、それを達成するために手段を選ばない女性として描かれています。これは、当時のヴィクトリア朝社会における女性のイメージとは大きくかけ離れたものでした。当時の女性は、貞淑で従順であることが求められ、欲望を openly に表現することはタブーとされていました。しかし、「サロメ」の登場によって、女性の欲望を正面から捉え直そうとする動きが生まれたとも言えるでしょう。

オリエンタリズムと西洋のまなざし

「サロメ」の舞台は古代のパレスチナであり、登場人物の多くはユダヤ人やローマ人です。ワイルドは、西洋文化とは異なる「オリエント」の世界を舞台にすることで、退廃的で官能的な雰囲気を強調しようとしました。しかし、これは西洋中心的な視点から見た「オリエント」のイメージであり、当時の植民地主義的な思想を反映したものとも言えます。

芸術至上主義と道徳の相克

ワイルドは、「芸術のための芸術」を主張し、芸術には道徳的な責任はないと考えていました。「サロメ」は、その思想を体現した作品と言えるでしょう。退廃的で官能的な描写は、当時の道徳観念からすると問題視されるものでしたが、ワイルドは芸術的な表現を優先しました。この作品は、芸術と道徳の関係について、さまざまな議論を巻き起こしました。

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