## ラシーヌのアンドロマックから学ぶ時代性
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栄光と愛のジレンマ：17世紀フランスの価値観
ラシーヌの悲劇「アンドロマック」は、トロイア戦争後のギリシャを舞台に、敗戦国の王妃アンドロマック、ギリシャの英雄ピュロス、その婚約者エルミオンヌ、そしてアンドロマックの息子アステュアナクスらの愛憎劇を描いた作品です。この作品は、17世紀フランスという時代背景の中で生まれ、当時の価値観を色濃く反映しています。
当時のフランスは、ルイ14世の治世下、絶対王政が確立され、宮廷貴族社会が華やかに花開いていた時代でした。人々は、国王への忠誠心、名誉、栄光といった価値観を重視し、それらを体現する英雄たちを理想像としていました。
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アンドロマックの苦悩：愛か、子の命か
劇中でアンドロマックは、夫ヘクトルを失った悲しみを抱えながら、ギリシャの捕虜として生きています。彼女は、息子アステュアナクスの命と引き換えにピュロスとの結婚を迫られ、愛と義務の間で苦悩します。
これは、当時の女性が置かれていた立場を象徴しています。女性は、結婚を通して家と家との結びつきを強め、家名と名誉を守るための存在として、政治的な道具として扱われることも少なくありませんでした。アンドロマックの苦悩は、当時の女性が直面した、自己犠牲を強いる社会の圧力と、愛や母性といった個人的な感情との葛藤を描いています。
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ピュロスとエルミオンヌ：激情と理性のはざまで
一方、ピュロスは、アンドロマックへの愛と、ギリシャの王としての立場との間で揺れ動きます。彼は、婚約者エルミオンヌを裏切ってまでアンドロマックを求める一方、ギリシャの英雄としての責任と名誉も放棄できません。
エルミオンヌもまた、ピュロスへの愛と、裏切られたことへの怒り、そしてギリシャの王女としてのプライドの間で苦しみます。彼女は、愛のために手段を選ばない激しい感情を見せる一方で、理性的に状況を判断しようと努める姿も描かれています。
彼らの葛藤は、当時の宮廷社会における恋愛観を反映しています。恋愛は、個人の感情よりも、社会的な立場や名誉と深く結びついていました。ピュロスとエルミオンヌの苦悩は、激情と理性、個人的な感情と社会的な責任の間で揺れ動く人間の姿を描き出しています。