## モーパッサンのベラミから学ぶ時代性
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19世紀末フランス社会の縮図
ギ・ド・モーパッサンの「ベラミ」は、1885年に発表された小説であり、第二帝政末期から第三共和政初期にかけてのフランス社会を背景に、野心的な青年ジョルジュ・デュロワの社会的な成功と没落を描いています。作品内では、当時の社会における様々な側面が鋭く描かれており、19世紀末フランス社会の縮図とも言えるでしょう。
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ジャーナリズムの隆盛とモラルの崩壊
「ベラミ」では、新聞社が大きな影響力を持つようになり、ジャーナリズムが社会に大きな影響を与える存在として描かれています。主人公デュロワは、文才や知性があるわけではありませんが、持ち前の美貌と女性を利用する狡猾さ、そして時代の流れに乗る嗅覚によって、新聞記者として出世していきます。これは、当時のジャーナリズムにおけるモラルの低下や、扇情的な記事で読者を惹きつける傾向を暗示しています。
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女性たちの立場と社会進出
当時のフランス社会では、女性は依然として男性に従属的な立場に置かれていましたが、「ベラミ」には、自立を目指したり、社会的な影響力を持とうとする女性たちの姿も描かれています。デュロワは、複数の女性たちと関係を持ちますが、彼女たちは単なる彼の欲望の対象ではなく、それぞれの思惑や野心を持って行動しています。これは、当時の社会における女性の役割や、変化の兆しを反映していると言えるでしょう。
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物質主義と社会不安
「ベラミ」では、経済的な成功や社会的地位への強い執着が、人々の行動原理として描かれています。デュロワは、金銭欲や権力欲に突き動かされ、手段を選ばずにのし上がろうとします。彼の周囲の人々もまた、私欲のために陰謀を企てたり、裏切り行為を繰り返します。これは、当時のフランス社会における物質主義の蔓延や、人々の倫理観の欠如を浮き彫りにしています。
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植民地主義と国家主義
「ベラミ」では、フランスの植民地政策や、それに関わる人々の姿も描かれています。当時のフランスは、アフリカやアジアなどに広大な植民地を築いていましたが、その裏では、現地の人々に対する搾取や、侵略行為が行われていました。作品内では、植民地での出来事が、フランス社会の内部にも影響を与えている様子が描かれており、当時の国家主義的な風潮や、植民地主義に対する批判的な視点も読み取ることができます。