## フローベールの感情教育から学ぶ時代性
19世紀フランスの社会と人間模様を描き出す
ギュスターヴ・フローベールの代表作『感情教育』は、1848年の二月革命から第二帝政期にかけてのフランス社会を舞台に、主人公フレデリック・モローの青年期から中年期までの約20年間を描いた長編小説です。
当時の社会階層と価値観を反映
作品内では、貴族階級の没落とブルジョワ階級の台頭、都市と農村の格差、革命と反動の繰り返しなど、当時のフランス社会が抱える様々な問題が浮き彫りになっています。
貴族出身のデシャルリュは、時代の流れに取り残され、没落していく貴族の姿を象徴しています。一方、ブルジョワ出身のフレデリックは、財産や地位を求めて野心を燃やすも、結局は満たされぬまま中年を迎えます。
恋愛観と女性の立場
フレデリックは、人妻であるアルヌ夫人に長年想いを寄せ続けますが、二人の関係は進展することなく、プラトニックな愛にとどまります。
これは、当時の社会における既婚女性の立場、そして恋愛と結婚の分離といったテーマを暗示しています。女性たちは、社会的な制約によって自由な恋愛を制限され、男性の所有物として扱われる側面がありました。
政治と革命への幻滅
作中では、1848年の二月革命とその後の経過が描かれていますが、人々の期待とは裏腹に、革命は新たな社会の到来をもたらすことなく、失望と挫折感だけが残ることになります。
フレデリック自身も、革命運動に一時的に身を投じますが、理想と現実のギャップに直面し、政治への関心を失っていきます。これは、当時のフランス社会全体に広がっていた政治への幻滅と無力感を反映しています。
物質主義の台頭と精神的な空虚感
第二帝政期に入ると、フランス社会は経済的な繁栄を享受する一方で、物質主義が蔓延し、人々の心は空虚になっていきます。
フレデリックもまた、金銭や名誉を求めて奔走するものの、真の幸福をつかむことはできません。これは、物質的な豊かさと精神的な充足感の乖離という、現代社会にも通じる普遍的なテーマを提起しています。