## ラシーヌのアンドロマックを面白く読む方法
1. 歴史的背景とギリシャ神話を理解する
アンドロマックは、トロイア戦争後のギリシャを舞台にした悲劇です。登場人物たちの行動や感情、人間関係をより深く理解するために、トロイア戦争やそれにまつわるギリシャ神話についての基礎知識があると、より作品を楽しめます。
例えば、トロイア戦争の原因となった「ヘレンの誘拐」、アキレス腱で有名な英雄アキレス、トロイの木馬の計略、そしてトロイアの滅亡といった出来事を事前に知っておくことで、登場人物たちの背景にある感情や葛藤がより鮮明に浮かび上がってきます。
2. 登場人物の関係性と立場に注目する
アンドロマックには、愛と復讐、義務と欲望の間で苦悩する登場人物たちが多く登場します。彼らの複雑な関係性や置かれている立場を理解することで、それぞれの行動やセリフの裏に隠された感情が見えてきます。
* **アンドロマック:** トロイアの英雄ヘクトルの妻。夫を失い、息子アステュアナクスと共にギリシャの将軍ピュルスの捕虜となる。祖国と息子の命の間で苦しい選択を迫られる。
* **ピュロス:** アキレスの息子でギリシャの将軍。アンドロマックに恋をするが、彼女の心を手に入れるためにはアステュアナクスを殺さなければならないというジレンマを抱える。
* **エルミオンヌ:** ギリシャの王女。ピュロスを愛しているが、彼の心がアンドロマックにあることに苦悩する。プライドと嫉妬に突き動かされ、悲劇的な行動に出る。
* **オレステ:** エルミオンヌに恋するギリシャの王子。エルミオンヌの愛を得るためにピュロスを排除しようとする。
3. 古典的な三一致の法則に注目する
アンドロマックは、古典主義演劇の三一致の法則（時間の統一、場所の統一、 Handlungの統一）に従って書かれた作品です。
* **時間の統一:** 作品内の時間は24時間以内に収められています。
* **場所の統一:** 物語の舞台はピュロスの宮殿内のみです。
* **Handlungの統一:** 作品は、ピュロスがアンドロマックに求婚する場面から始まり、エルミオンヌの自殺とオレステの狂気で幕を閉じるまで、一つの筋道に沿って展開されます。
これらの法則に注目することで、ラシーヌが意図した緊迫感や集中力をより強く感じ取ることができます。
4. アレクサンドランと韻律の美しさを味わう
アンドロマックは、フランス古典主義演劇の特徴である alexandrin（アレクサンドラン）と呼ばれる12音節の韻文で書かれています。 ラシーヌは、アレクサンドランの厳格な韻律の中に、登場人物たちの感情の機微や葛藤を巧みに織り交ぜています。
日本語訳では韻律を完全に再現することはできませんが、原文の韻律やリズムを意識しながら読むことで、フランス古典主義演劇特有の美しさを味わうことができます。
5. 現代社会との共通点を見出す
アンドロマックは17世紀に書かれた作品ですが、愛と憎しみ、義務と欲望、復讐と赦しといった普遍的なテーマが描かれています。
登場人物たちの苦悩や葛藤は、現代社会にも通じるものがあります。作品を通して、人間の心の奥底にある感情や現代社会との共通点を見出すことで、アンドロマックをより深く理解し、楽しむことができるでしょう。