テグジュペリの風、砂と星を面白く読む方法
想像力を掻き立てる情景描写に浸る
テグジュペリの文章の魅力の一つに、その研ぎ澄まされた五感を思わせるような描写力があります。砂漠の灼熱の太陽、夜空に広がる満天の星、風の音、飛行機のエンジンの轟音。まるで読者自身がサハラ砂漠の上空を飛行しているかのような錯覚に陥るほど、鮮やかに情景が浮かび上がります。
そこで、単に文字を追うのではなく、意識的に五感を研ぎ澄ましてみましょう。例えば、砂漠の描写を読む際には、実際に砂漠の熱風や砂の感触を想像してみてください。夜空の描写を読む際には、プラネタリウムにいるような気持ちで、満天の星を思い描いてみましょう。
このように、テグジュペリの言葉の一つ一つを味わいながら、五感をフル活用して読むことで、より深く作品世界に没入することができます。
登場人物との対話を通して自分自身を見つめ直す
『風、砂と星』には、様々な登場人物が登場します。砂漠で出会った遭難者、郵便輸送機の同僚、孤独な飛行家など、いずれも個性豊かで印象的です。テグジュペリは、彼らとの出会いと対話を通して、人生や人間の本質について深く考察しています。
彼らの言葉に耳を傾けながら、自分自身と重ね合わせてみましょう。「もし自分が彼らの立場だったら？」「自分だったらどう行動するだろうか？」と自問自答することで、登場人物たちの苦悩や喜びがよりリアルに感じられるはずです。
テグジュペリは、登場人物たちの生き様を通して、私たちに多くの問いを投げかけています。それは、人生の意味、友情の大切さ、愛の力、そして人間の尊厳など、普遍的なテーマばかりです。彼らの言葉と真摯に向き合うことで、自分自身の価値観や人生観を見つめ直すきっかけが得られるでしょう。
飛行体験と重ね合わせて冒険心を刺激する
テグジュペリ自身も経験した、郵便輸送機のパイロットとしての上空からの視点、そして砂漠で遭難した際の極限状態での体験。これらを通して、彼は自由、孤独、死といったテーマを浮き彫りにしています。
当時最先端技術であった飛行機を操縦し、広大な空を飛行するということは、まさに命がけの冒険でした。テグジュペリは、その危険と隣り合わせの状況の中で、生の喜びと、生と死に対する深い洞察を得ていきます。
現代では、安全な旅客機で容易に空を旅することができます。しかし、テグジュペリの時代には想像もつかなかったような便利な世の中を生きる私たちも、彼の言葉を通して、冒険心や挑戦することの大切さを改めて認識することができるはずです。
時代背景や社会状況を理解する
『風、砂と星』は、1930年代という激動の時代に書かれました。世界恐慌、ファシズムの台頭、戦争の影が世界中に広がりつつある時代でした。テグジュペリ自身も、戦争にパイロットとして参加し、その現実を目の当たりにしています。
彼の作品には、当時の不安定な社会状況や、戦争の悲惨さ、人間の愚かさに対する怒りや悲しみが色濃く反映されています。作品をより深く理解するためには、当時の時代背景や社会状況について事前に調べておくことが有効です。
テグジュペリが作品に込めたメッセージは、現代社会にも通じるものがあります。彼の時代から約100年が経ち、世界は大きく変化しましたが、人間の本質は大きく変わっていないのかもしれません。