—の今昔物語集が書かれた時代背景
今昔物語集が成立したのは平安時代末期から鎌倉時代初期にかけてとされており、これは日本の文化と社会が大きく変化していた時代でした。この時代背景を踏まえて、当時の読書の位置づけと他のメディアとの関連性について探ることは、今昔物語集の成立背景を理解する上で重要な視点となります。
平安時代末期の読書文化
平安時代末期は、貴族社会の文化が花開いた時代であり、読書は主に貴族階級に限られた文化活動でした。この時期には、物語や日記、歌集などの文学作品が数多く書かれ、読まれていました。こうした文学作品は、主に写経によって伝わり、限られた人々の間で共有される宝物であったと言えます。今昔物語集も、この時代の文化的背景の中で成立し、当時の社会や人々の価値観、信仰、日常生活などを反映した内容が含まれています。
他メディアとの関係性
平安時代末期から鎌倉時代初期にかけては、書物以外のメディアとして絵巻物が人気を博していました。絵巻物は、絵と文章が組み合わされたメディアであり、物語を視覚的にも楽しむことができる点が特徴です。絵巻物は、読み書きが限られた貴族や寺院関係者だけでなく、一般の人々にも物語を伝える手段として利用されました。このように、今昔物語集が成立した時代には、文字を介したコミュニケーション手段としての読書だけでなく、視覚的な表現を通じた物語の伝達も行われていたのです。
さらに、この時代には、朗読や語りといった口頭伝承も重要なメディアでした。物語や伝説、仏教説話などは、寺社や集会で語り継がれることによって広く伝わり、人々の間で共有される文化となっていました。今昔物語集に含まれる多くの物語も、もともとは口頭で語られていたものが文字によって記録されたものであり、この時代のコミュニケーション手段の多様性を示しています。
このように、今昔物語集が書かれた時代の読書は、貴族社会の限られた文化活動としての側面がある一方で、絵巻物や口頭伝承といった他のメディアと連携しながら、より広い層の人々に物語を伝える手段として発展していったことが見て取れます。今昔物語集の成立背景を理解するためには、この時代のメディア環境と読書文化の特性を捉えることが不可欠です。