# シュミットの政治的なものの概念を深く理解するための背景知識

ワイマール共和国における政治状況

ワイマール共和国は、第一次世界大戦後のドイツに成立した議会制民主主義国家です。しかし、その成立当初から様々な困難に直面していました。敗戦による領土の喪失や多額の賠償金、国内の経済混乱、左右両翼からの政治的攻撃など、共和国を揺るがす要因は枚挙に暇がありませんでした。このような不安定な状況下で、シュミットはワイマール憲法の制定に関わり、憲法学者として政治状況を鋭く観察していました。彼の政治的なものの概念は、ワイマール共和国の経験を踏まえ、議会制民主主義の脆弱性と危機に対する深い洞察から生まれたと言えるでしょう。

シュミットの思想的背景

シュミットの思想は、カトリック的な保守主義、ドイツ観念論、実存主義など、多様な思想的潮流の影響を受けて形成されました。特に、カール・シュミットに大きな影響を与えたのは、政治思想家であり歴史学者でもあるマックス・ウェーバーです。ウェーバーは、近代社会における合理化の進展と官僚制の支配を分析し、政治における指導者の役割を重視しました。シュミットはウェーバーの思想を継承しつつ、さらに政治の本質を敵味方の区別に見出し、政治と道徳、倫理などの領域との峻別を強調しました。

政治的なものの概念の中心的な主張

シュミットの政治的なものの概念の中心的な主張は、「政治的なものは、究極的には敵と味方の区別に還元される」というものです。シュミットは、政治とは集団間の対立や葛藤を前提とし、その本質は敵味方の区別にあると主張しました。この区別は、道徳的・倫理的な善悪判断や経済的な利害とは異なる、独自の論理に基づいています。敵は、集団の存在を脅かす可能性のある他者であり、味方は、集団の存続のために協力する仲間です。シュミットは、政治においては、この敵味方の区別を明確にすることが重要であると考えました。

主権概念との関連

シュミットの政治的なものの概念は、彼の主権概念と密接に関連しています。シュミットは、「主権者とは、例外状態を決定する者である」と定義しました。例外状態とは、通常の法秩序が機能しなくなる非常事態を指します。このような状況下では、主権者は法を超越した決断を行い、国家の存続を確保しなければなりません。シュミットは、主権者が敵味方の区別を最終的に決定する権限を持つと主張し、政治の本質は主権者の決断にあると考えました。

自由主義と民主主義への批判

シュミットは、自由主義と民主主義に対して批判的な立場をとっていました。彼は、自由主義は政治的な敵味方の区別を曖昧にし、国家の統一と決断力を弱めると考えました。また、民主主義は、多数派による支配を正当化するだけで、真の政治的な決断を下すことができないと批判しました。シュミットは、ワイマール共和国の議会制民主主義が、左右両翼の対立によって機能不全に陥っていることを目の当たりにし、自由主義と民主主義の限界を痛感していました。

友敵論の影響

シュミットの政治的なものの概念は、「友敵論」と呼ばれることもあります。これは、敵味方の区別を政治の本質と捉える彼の思想を端的に表したものです。シュミットの友敵論は、政治思想史において大きな影響を与え、現在でも議論の対象となっています。彼の思想は、政治における対立や葛藤の重要性を改めて認識させると同時に、敵味方の区別を過度に強調することの危険性についても議論を呼び起こしました。

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