## シェイクスピアのリア王を深く理解するための背景知識
ブリテン列王伝説とリア王の物語
シェイクスピアのリア王は、ブリテンの伝説的な王であるリア（リーア）の物語を題材としています。この伝説は、ジェフリー・オブ・ Monmouthが１２世紀に著した「ブリタニア列王史」に記されています。ジェフリーの記録によると、リアはローマによるブリテン征服以前の紀元前８世紀頃に実在した王とされています。しかし、歴史的な裏付けはなく、伝説上の王と考えるのが一般的です。ジェフリーの物語では、リアには３人の娘、ゴネリル、レーガン、コーデリアがおり、リアは娘たちに自分の愛情の深さを競わせ、その結果、正直なコーデリアを勘当し、ゴネリルとレーガンに国を分割して与えます。その後、リアは２人の娘に裏切られ、悲惨な末路をたどることになります。
シェイクスピアの時代の王権と継承
シェイクスピアが「リア王」を執筆した１７世紀初頭のイングランドは、エリザベス１世の統治の後期にあたります。エリザベス１世には子がなく、後継者問題が深刻化していました。王位継承は、国家の安定と将来を左右する重要な問題であり、国民の関心も非常に高かったのです。シェイクスピアの「リア王」は、王位継承をめぐる争いと、それに伴う権力闘争、家族間の裏切りなどを描いた作品であり、当時の社会状況を反映していると考えられます。
長子相続制と分割相続制
「リア王」の物語では、リアが国を３人の娘に分割して与えるという描写が登場します。これは、当時のイングランドでは一般的であった長子相続制とは異なる相続方法です。長子相続制では、長男が全ての財産と爵位を相続し、国家の統一と安定を維持することを目的としていました。一方、分割相続制は、財産を子供たちに均等に分配する相続方法であり、フランスなどでは一般的でした。リアが分割相続を選択したことが、後の悲劇につながる一因となります。シェイクスピアは、長子相続制の重要性を暗示していたのかもしれません。
絶対王政と神権説
シェイクスピアの時代は、絶対王政が確立されつつある時期でした。絶対王政とは、国王が絶対的な権力を持ち、議会などの制約を受けずに政治を行う体制です。国王の権力は神から授けられたものと考えられており、これを神権説といいます。リア王は、自らの権力を絶対的なものと信じ、娘たちに服従を強いますが、最終的には権力を失い、悲惨な末路をたどります。この物語は、絶対的な権力を持つ王であっても、人間の弱さや過ちから逃れられないことを示唆しているとも解釈できます。
ルネサンス期の人間観と自然観
シェイクスピアが活躍した１６世紀から１７世紀は、ルネサンスと呼ばれる時代です。ルネサンス期には、中世的な神中心主義から人間中心主義へと転換し、人間理性や個人の能力が重視されるようになりました。また、自然に対する関心も高まり、自然科学が発展しました。「リア王」では、人間の理性や感情、自然の力などが複雑に絡み合い、登場人物たちの運命を左右していきます。シェイクスピアは、ルネサンス期の人間観や自然観を反映させながら、人間の存在の深淵を描き出しています。
四大悲劇とリア王の特徴
「リア王」は、「ハムレット」、「オセロ」、「マクベス」とともに、シェイクスピアの四大悲劇と呼ばれています。四大悲劇は、いずれも人間の心の奥底にある闇や葛藤を描き出した作品であり、人間の悲劇的な運命をテーマとしています。「リア王」の特徴としては、他の悲劇に比べて、より壮大なスケールで描かれていること、登場人物たちの苦悩や絶望がより深く、強烈に表現されていることなどが挙げられます。また、自然の描写が重要な役割を果たしており、荒れ狂う嵐の場面などは、登場人物たちの内面状態を象徴的に表しています。
Amazonでリア王 の本を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。