## ヘーゲルの法哲学要綱の位置づけ
###
ヘーゲル哲学における位置づけ
「法哲学要綱」は、ヘーゲルの後期思想、とりわけ彼の哲学体系の「客観精神」論理学と「精神現象学」で展開された論理を現実の世界に適用した具体的な考察にあたります。
ヘーゲル哲学体系において、「精神現象学」は個人の精神の自己展開を、「論理学」は絶対知の自己展開をそれぞれ描いています。「法哲学要綱」は、これらで示された精神の展開を現実社会において具体的に展開したものであり、個人を超えた共通の意志である「客観精神」の具体的な現れとして法を位置付けています。
###
思想史における位置づけ
「法哲学要綱」は、近代自然法論と近代自然権思想を批判的に継承しつつ、独自の国家論、法論を展開した著作として位置づけられます。
ヘーゲルは、ルソーなどに見られるような抽象的な自然状態を想定するのではなく、歴史的発展の中で理性的な法秩序が形成されていく過程を重視しました。また、個人の権利を絶対視するのではなく、国家という共同体における個人の権利と義務の調和を重視しています。
「法哲学要綱」は、その後の法哲学、政治哲学に多大な影響を与え、マルクス主義や国家主義など、多様な思想を生み出す源泉の一つとなりました。一方で、その国家観や歴史観は、全体主義を正当化する危険性も孕んでいるという批判もなされています。
Amazonで詳細を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。