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イェーリングのローマ法の精神の位置づけ

## イェーリングのローマ法の精神の位置づけ

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刊行と影響

ルドルフ・フォン・イェーリングの主著『ローマ法の精神』(Der Geist des römischen Rechts auf den verschiedenen Stufen seiner Entwicklung) は、1852年から1865年にかけて全4巻で刊行されました。本書は、古代ローマ法の歴史と理念を、近代市民社会の形成原理と結びつけて論じた画期的な著作として、法学界のみならず、歴史学、社会学、政治思想史などの分野にも多大な影響を与えました。

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ローマ法研究における位置づけ

19世紀前半のローマ法研究は、ローマ法典の解釈学を中心とした歴史法学派が主流でした。彼らは、法を不変の論理体系として捉え、法解釈においては法典の文言や体系的整合性を重視しました。

イェーリングは、こうした歴史法学派の形式主義的な法解釈を批判し、法を社会の現実と切り離された抽象的な存在としてではなく、社会生活のなかで現実的に作用する「生きた法」として捉えるべきだと主張しました。

そして、ローマ法を単なる過去の遺物としてではなく、近代市民社会の法的秩序の根源として位置づけ、その歴史的発展過程を分析することで、近代法の理念と課題を明らかにしようとしました。

特に、ローマ法における「私的自治の原理」や「権利のための闘争」といった概念に着目し、それらが近代市民社会の自由と秩序を支える基盤となっていることを明らかにしました。

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方法論の特徴

イェーリングは、ローマ法の精神を明らかにするために、従来の歴史法学派とは異なる方法論を採用しました。彼は、法典の条文や裁判例といった法的資料だけでなく、文学、哲学、宗教など、当時の社会状況を反映するあらゆる資料を駆使して、ローマ法の背後にある思想や理念を総合的に考察しました。

また、法発展の原動力を、民族精神や法的理念といった抽象的な概念ではなく、「目的」と「手段」の関係から説明しようとする「目的法学」の立場をとり、ローマ法の発展を、具体的な法的問題に対する実践的な解決策の積み重ねとして捉えました。

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評価と批判

『ローマ法の精神』は、その壮大な構想と革新的な方法論によって、近代法学の古典としての評価を確立しました。しかし、その一方で、歴史的資料の解釈や方法論において、恣意的な側面や、歴史を目的論的に解釈しているという批判もあります。

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