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ヒュームの人間機械論の仕組み

## ヒュームの人間機械論の仕組み

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経験論に基づく心の分析

ヒュームは、ロックに始まる経験論を継承し、人間の心の働きを経験から得られる観念の連鎖によって説明しようとしました。彼によれば、我々が認識できるのは、感覚を通して得られる「印象」と、その印象を記憶や想像によって心に描き出した「観念」のみです。そして、複雑な思考や感情、判断といった心の働きも、これら単純な観念が結びつくことで生じると考えました。

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観念の結合規則:連合の原理

では、観念はどのようにして結びつくのでしょうか。ヒュームは、観念の結合を支配する規則として、「連合アソシエーションの原理」を挙げました。これは、人間の心が、類似性、時空的近接性、因果関係といった自然的傾向に基づいて、ある観念から別の観念を自動的に想起するという原理です。 例えば、赤いリンゴを見れば、その色や形から過去のリンゴの記憶が呼び起こされ、「リンゴ」という概念が想起されます。これが類似性による連合です。また、雷鳴の直後に稲妻を目撃すれば、時間的に近いという経験から、雷鳴は稲妻と結びつけられます。これが時空的近接性による連合です。

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因果関係の懐疑:習慣に基づく推論

ヒュームは、この連合の原理の中でも、特に重要なのが因果関係であると同時に、それが非常に問題含みであると考えました。なぜなら、我々は経験を通してある事象が別の事象の原因や結果であると判断していますが、実際には、二つの事象の間に必然的なつながりを経験しているわけではないからです。例えば、ビリヤードの球を撞く時、我々は手球が的球に当たることによって、的球が動き出すと考えています。しかし、実際に経験しているのは、手球の動き、的球への接触、そして的球の動きの三つの事象の連続に過ぎず、それらの間に必然的な因果関係を見出すことはできません。

では、なぜ我々は因果関係を確信しているかのように感じるのでしょうか。ヒュームは、その理由を「習慣」に見出しました。つまり、類似した事象の継起を繰り返し経験することによって、ある事象が現れれば別の事象が必然的に生じると予測する習慣が形成され、それが因果関係の信念を生み出すのだと説明しました。

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人間機械論:受動的な心のメカニズム

このように、ヒュームは、人間の心の働きを、経験に基づいて自動的に作動するメカニズムとして捉えました。理性や意志といった働きも、最終的には感覚経験と、その経験から形成された観念の連合によって説明できると考えました。これは、人間の心を複雑な機械の仕組みに喩えられるものであり、「人間機械論」と呼ばれています。

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