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ルソーの学問芸術論のメカニズム

## ルソーの学問芸術論のメカニズム

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問いの設定:学問芸術は風俗を浄化するのか?

ルソーは、ディジョンアカデミーの懸賞論文のテーマ「学問芸術の復興は風俗の浄化に貢献したか」に対して、否定的な立場から論を展開しました。ルソーはこの問いを、大きく二つの側面から考察しています。

まず、学問芸術そのものの本質についての考察です。ルソーは、学問芸術は人間の自然な欲求から生まれたものではなく、贅沢と怠惰から生まれた「虚栄心」や「名誉欲」を満たすためのものだと主張します。そして、これらの欲望は人間を堕落させ、社会に腐敗をもたらすと考えました。

次に、学問芸術が社会に与える影響についての考察です。ルソーは、学問芸術の発展が必ずしも道徳的な進歩をもたらすわけではないことを、古代ギリシャやローマの例を挙げて示します。そして、学問芸術はむしろ人間を偽善的にし、社会に不平等と腐敗を広げると批判しました。

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文明社会への批判:自然状態からの堕落

ルソーは、人間は本来「自然状態」においては善良で、自愛の感情によってのみ動かされていたと考えます。しかし、社会が形成され、私有財産や社会的地位といった概念が生まれると、人間は競争や対立に巻き込まれ、虚栄心や名誉欲に取り憑かれていきます。

ルソーは、学問芸術はこのような文明社会における競争を激化させ、人間の堕落を加速させるものだと考えました。学問芸術は、人々に知識や技術を競わせ、社会的地位や名声を追い求めるように仕向けます。その結果、人間は本来の善良さを失い、虚偽と欺瞞に満ちた存在へと変貌してしまうとルソーは批判します。

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徳の重視:自然への回帰

ルソーは、堕落した文明社会を救うためには、人間が本来の善良さを取り戻す必要があると考えました。そして、そのために必要なのは、学問芸術によって歪められた人間性を回復し、「自然」へと回帰することだと主張します。

ルソーは、「自然」を理想化しているわけではありません。むしろ、人間は社会的な存在であることを認めています。しかし、ルソーは、人間が真の幸福を得るためには、社会生活の中で失われた「自然な感情」を取り戻すことが重要だと考えました。

ルソーは、学問芸術の代わりに、感性や情操を育む教育の重要性を説きます。そして、人間は理性よりもむしろ感情によって導かれるべきであり、「徳」こそが社会を真に浄化するものであると結論づけます。

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