ハイゼンベルクの現代物理学の思想の対極
アイザック・ニュートンの「プリンキピア」：決定論的な世界観
ヴェルナー・ハイゼンベルクの「現代物理学の思想」は、量子力学の革新的な概念、特に不確定性原理を通じて、自然に対する確率論的な理解を提示しています。 この思想の対極にある古典的な名著として、アイザック・ニュートンの「プリンキピア（自然哲学の数学的諸原理）」が挙げられます。
決定論的な宇宙像
1687年に出版された「プリンキピア」は、古典力学の基礎を築き、その後の科学革命を牽引しました。 ニュートンは、運動の法則と万有引力の法則を数学的に厳密に定式化し、地球上の物体の運動から天体の運行までを統一的に説明することに成功しました。
ニュートンの力学体系において、宇宙は巨大な機械のようなものであり、その運動は決定論的に支配されています。 初期状態が決まれば、その後の状態はニュートンの法則によって一意に決定され、未来は予測可能であると考えられています。 これは、量子力学における不確定性原理、すなわち位置と運動量のような物理量を同時に正確に決定できないという概念とは対照的です。
「プリンキピア」の影響
「プリンキピア」は、その後の科学の発展に計り知れない影響を与えました。 ニュートンの力学は、天文学、工学、物理学などの分野で広く応用され、産業革命を支える技術革新にも貢献しました。 また、「プリンキピア」は、理性と観察に基づく近代科学の方法論を確立した点でも画期的でした。
しかしながら、20世紀初頭の量子力学の誕生は、ニュートン力学の適用範囲が巨視的な世界に限定されることを明らかにしました。 ハイゼンベルクの不確定性原理は、古典物理学の決定論的な世界観に根本的な疑問を投げかけ、自然に対する私たちの理解を大きく変えることになりました。