エンゲルスの空想から科学への関連著作
エンゲルスの「空想から科学へ」
フリードリヒ・エンゲルスの著書「空想から科学へ – 社会主義の発展」は、1880年にフランス語で初めて出版されました。原題は「社会主義：空想的から科学的へ」であり、エンゲルス自身が認めるように、カール・マルクスの影響を強く受けています。
本書の内容と背景
本書は、社会主義思想の発展を、初期の「空想的社会主義」からマルクスとエンゲルスが提唱した「科学的社会主義」への移行として捉え、その歴史的過程を解説しています。エンゲルスは、サン＝シモン、フーリエ、オーウェンといった初期社会主義者を「空想的」と位置づけ、彼らの思想は、資本主義社会の矛盾を批判し、理想的な社会のビジョンを提示したものの、社会変革を実現するための現実的な方法論を欠いていたと論じています。
「科学的社会主義」の特徴
一方で、マルクスとエンゲルスが提唱した「科学的社会主義」は、唯物論と弁証法に基づき、歴史を物質的な生産様式の発展の過程として捉える「唯物史観」を基盤としています。エンゲルスは、資本主義社会の内部矛盾を分析し、資本主義は必然的に崩壊し、プロレタリアートによる社会主義革命を経て、共産主義社会が到来すると主張しました。
本書の影響
「空想から科学へ」は、マルクス主義の入門書としての役割を果たし、社会主義思想の普及に大きく貢献しました。特に、ロシア革命後のソ連をはじめとする共産主義国家では、マルクス・レーニン主義の公式な解釈として広まりました。しかし、その一方で、本書における「科学的社会主義」の主張は、歴史決定論的な側面や階級闘争の強調など、その後の歴史における様々な問題点も指摘されています。