エラスムスの痴愚神礼讃の関連著作
トマス・モア『ユートピア』 (1516年)
エラスムスと親交のあったトマス・モアが著した『ユートピア』は、『痴愚神礼讃』と同じく、風刺とユーモアを交えながら当時の社会を批判した作品です。
『ユートピア』では、架空の理想社会「ユートピア」が描かれ、私有財産制の廃止、宗教的寛容、教育の重視など、当時のヨーロッパ社会とは大きく異なる制度が紹介されています。これは、当時の社会における貧困、宗教対立、教育不足といった問題点を浮き彫りにし、読者に新たな社会のあり方を提示するものでした。
『痴愚神礼讃』と同様に、ラテン語で書かれた『ユートピア』は、当時の知識人層を中心に広く読まれ、大きな反響を呼びました。
フランソワ・ラブレー『ガルガンチュワとパンタグリュエル』 (1532年-1564年)
ルネサンス期のフランス文学を代表する作品である『ガルガンチュワとパンタグリュエル』は、巨人 Gargantua とその息子 Pantagruel の冒険物語という体裁を取りながら、当時の社会、宗教、文化を痛烈に風刺した小説です。
過剰な食事や排便の描写など、下品でグロテスクな表現も多用されており、その作風は『痴愚神礼讃』の持つユーモアと風刺の精神に通じるものがあります。
また、両作品とも、中世のスコラ哲学の権威主義や形式主義を批判し、人間の理性と自由を擁護するという点で共通しています。