モリエールのタルチュフの関連著作
コメディ・フランセーズとモリエールの遺産
コメディ・フランセーズは、1680 年にルイ 14 世によって設立されたフランスの国立劇場です。設立当初からモリエールの作品をレパートリーの中心に据えており、「タルチュフ」をはじめとする彼の傑作の数々は、今日までコメディ・フランセーズの舞台で繰り返し上演され続けています。
モリエールは古典主義演劇の代表的な劇作家として知られていますが、その風刺の鋭さゆえに、生前から多くの批判や攻撃にさらされてきました。「タルチュフ」もまた、偽善的な宗教家を痛烈に批判した作品として、上演当時には大きな論争を巻き起こしました。
コメディ・フランセーズは、こうしたモリエールの劇作における革新性と社会風刺の精神を受け継ぎ、フランス演劇界を牽引する存在として、その伝統を今日に伝えています。
ジャン・ラシーヌ「アンドロマック」（1667年）
「アンドロマック」は、モリエールと同時代のフランス古典主義演劇を代表する劇作家、ジャン・ラシーヌによる悲劇です。トロイア戦争後のギリシャを舞台に、英雄ヘクトールの妻アンドロマックと、彼女に恋をするギリシャの王子ピュロス、そしてピュロスに想いを寄せるヘクトルとアンドロマックの息子アステュアナクスらの愛憎劇が描かれます。
「タルチュフ」が喜劇であるのに対し、「アンドロマック」は悲劇であり、その作風は大きく異なります。しかし、どちらも人間の心理を深く掘り下げ、普遍的なテーマを探求している点で共通しています。また、両作品とも、フランス古典主義演劇の三原則である「時の一致」「場所の一致」「筋の一致」を厳守しており、17世紀フランス演劇の規範を示すものとして高く評価されています。
ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ「寓話」（1668年 – 1694年）
ジャン・ド・ラ・フォンテーヌは、モリエールやラシーヌと同時代のフランス文学を代表する詩人です。動物などを擬人化し、教訓を盛り込んだ短い物語である「寓話」の作者として広く知られています。
「寓話」は、人間の弱さや愚かさを風刺を交えながら描いた作品であり、その点で「タルチュフ」と共通する部分があります。モリエールが演劇という形式を用いて社会や人間の偽善を批判したのに対し、ラ・フォンテーヌは寓話というより間接的な形式で人間の普遍的な弱点を描き出しました。