ドストエフスキーの悪霊の案内
登場人物
ステパン・トロフィーモヴィッチ・ヴェルホーヴェンスキー：
かつては裕福な地主の家の家庭教師を務め、リベラルな思想家として一定の評価を得ていた初老の男。息子ニコライとは疎遠。
ニコライ・スタヴローギン
ステパン・トロフィーモヴィッチの息子で、物語の中心人物。美貌とカリスマ性を持ちながら、虚無主義的な思想に染まっている。
ピョートル・ヴェルホーヴェンスキー
ステパン・トロフィーモヴィッチの息子を自称する謎の男。革命を企てる秘密結社のリーダー格で、巧みな話術で周囲の人間を操る。
イワン・シャートフ
元大学生で、かつてはニコライ・スタヴローギンと同じ革命サークルに所属していた。現在は信仰に傾倒している。
アレクセイ・キリロフ
元技術者で、独自の哲学を展開する変わり者。自殺願望を抱えている。
あらすじ
19世紀後半のロシアを舞台に、地方都市に現れた謎の革命家グループが引き起こす騒動を描いた物語。
ステパン・トロフィーモヴィッチはかつての教え子であるワルワーラ・スタヴローギナ夫人とその息子ニコライと同居している。ニコライは美貌とカリスマ性を持ちながらも、虚無主義的な思想に染まり、退廃的な生活を送っていた。
そこにステパン・トロフィーモヴィッチの息子を自称するピョートル・ヴェルホーヴェンスキーが現れる。彼は革命を企てる秘密結社のリーダー格で、ニコライやその周辺の人々を巻き込み、街に混乱と破壊をもたらそうとする。
ピョートルは巧みな話術で人々を操り、それぞれの弱みにつけ込んで革命へと駆り立てていく。ニコライはピョートルの計画に一時的に共鳴するも、次第に彼の真意を疑い始める。
一方、かつてニコライと同じ革命サークルに所属していたシャートフは、現在は信仰に傾倒し、革命思想を否定していた。彼はピョートルの計画の危険性を察知し、ニコライに警告を発する。
街ではピョートルの扇動によって、革命を支持する者と反対する者の間で対立が激化していく。そして、ついにピョートルの計画は恐るべき結末を迎えることになる。
テーマ
「悪霊」は、19世紀後半のロシア社会を揺るがした革命運動と、当時のロシア知識人の間で蔓延していたニヒリズム（虚無主義）をテーマにした作品。ドストエフスキーは、伝統的な価値観や信仰を否定し、破壊と暴力によって理想社会を実現しようとする革命思想の危険性を鋭く批判している。
また、「悪霊」は父と子の対立、信仰と無神論の対立、愛と憎しみの対立など、普遍的なテーマも描いている。複雑な人間関係や心理描写を通して、人間の心の奥底に潜む「悪」と、そこから逃れようとする人間の苦悩が描かれている。