## シュペングラーの西洋の没落の周辺
### 出版と反響
1918年に出版されたオズヴァルト・シュペングラーの主著『西洋の没落』は、第一次世界大戦後の厭世的な雰囲気の中、大きな反響を呼びました。学問的訓練を受けていないにもかかわらず、歴史、哲学、芸術、数学など広範な分野を独自の体系で論じ、西洋文明の衰退と終焉を予言した本書は、ベストセラーとなり、シュペングラーは一躍時代の寵児となりました。
### シュペングラーの生涯と時代背景
シュペングラーは、1880年にドイツに生まれました。古典的な教育を受け、歴史と数学に強い関心を抱いていました。大学では歴史、哲学、数学を学び、教員資格を取得して高校教師として働きました。その後、作家活動に専念し、『西洋の没落』を執筆しました。第一次世界大戦後、ドイツは敗戦国となり、政治的にも経済的にも混乱していました。人々は将来に不安を抱き、閉塞感に満ちた時代でした。このような時代背景の中、シュペングラーの著作は、西洋文明の終焉を予言するものとして、人々に大きな衝撃を与えました。
### 主要な概念
『西洋の没落』の中心的な概念は、歴史は循環するというものです。シュペングラーは、歴史は単線的な進歩ではなく、生物のように誕生、成長、衰退、死滅を繰り返すと考えました。彼は、エジプト文明、ギリシャ文明、ローマ文明など、過去の文明を分析し、それぞれの文明には約1000年の寿命があると主張しました。そして、西洋文明もまた、すでに衰退期に入っており、やがて終焉を迎えると予言しました。
### 批判と影響
『西洋の没落』は、その大胆な仮説と広範な知識によって、多くの読者を魅了しました。しかし、その一方で、その歴史観や方法論に対しては、多くの批判が寄せられました。特に、歴史を循環的に捉える決定論的な歴史観や、西洋文明をひとくくりにする文化形態論に対しては、多くの歴史家から反論が出されました。
しかし、『西洋の没落』は、その後の歴史学、哲学、文化論に大きな影響を与えました。特に、西洋中心主義的な歴史観に対する批判や、文明の盛衰に対する関心を高めた点で、その功績は大きいと言えます。