## ソルジェニーツィンの癌病棟の周辺
作品概要
『イワン・デニーソヴィチの一日』でスターリン批判を行い、ノーベル文学賞を受賞したロシアの作家、アレクサンドル・ソルジェニーツィンによって1968年に発表された長編小説。
執筆の背景
1954年から1955年にかけて、ソルジェニーツィン自身が食道癌でウズベキスタンのタシケントにある病院に入院し、そこで目にした癌患者たちの姿と、ソ連社会における体制や人間の生き様を対比させて描いている。
舞台と時代
1950年代、スターリン死後の雪解けの時代が始まった頃のソビエト連邦を舞台に、中央アジア・ウズベキスタン共和国のとある街にある癌病棟での出来事が描かれる。
登場人物
様々な境遇の癌患者たちが登場する。主人公は、元軍人で強制収容所での経験を持つオレグ・コストグロトフ。
その他、共産主義の理想に忠実な党官僚パーヴェル・ニコラエヴィチ・リュービン、医師のヴェーゲ、元軍人シュルビンなどが登場する。
テーマ
死を目前にした人間の生の意味、ソビエト体制における抑圧と自由、人間の尊厳、愛と信仰などが主要なテーマとして描かれる。
作風
社会主義リアリズムとは異なる、写実的な描写が特徴。登場人物たちの会話や心理描写を通じて、当時のソ連社会の現実や人々の心情がリアルに描かれている。
影響
スターリン批判と社会主義体制への批判を含んでいるため、ソ連国内では発表当時、発禁処分となった。西側諸国で先に出版され、大きな反響を呼んだ。 ソ連国内では、ペレストロイカが始まってから出版が許可された。
その他
作品中には、収容所の体験や医療現場での出来事など、ソルジェニーツィン自身の経験が色濃く反映されている。