## パレートの社会学概論の力
社会学への新たな視点を提供
ヴィルフレド・パレートの主著『社会学概論』(Trattato di sociologia generale) (1916)は、20世紀初頭の社会学に大きな影響を与えただけでなく、現代社会においてもその示唆に富む分析が再評価されています。パレートは、従来の社会学が理念や進歩といった概念に偏っていることを批判し、人間の非合理的な行動や感情、社会の循環論的な動態に焦点を当てた独自の社会理論を展開しました。
「論理的行動」と「非論理的行動」の分析
パレートは、人間の行動を「論理的行動」と「非論理的行動」に分類しました。論理的行動とは、目的と手段の関係が客観的に見て合理的である行動を指します。一方、非論理的行動は、感情、習慣、信仰などによって突き動かされる行動であり、パレートは人間行動の大部分を占めるのはこちらであると主張しました。
「残渣」と「派生」による社会現象の解釈
パレートは、人間の非論理的行動の根底にある心理的な力を「残渣」と呼びました。残渣は、人間の生得的な衝動や本能に深く根ざしており、社会や文化によって変化するものではありません。パレートは、六つの主要な残渣を特定し、それらが社会構造や歴史的変化にどのように影響するかを分析しました。
さらに、パレートは、人々が自身の行動を正当化するために用いる理屈やイデオロギーを「派生」と呼びました。派生は、残渣とは異なり、時代や社会状況によって変化するものであり、パレートは、宗教、道徳、政治思想などを派生の例として挙げました。
「エリートの循環」と社会変動のメカニズム
パレートは、社会における権力構造とエリート層の交代劇にも着目しました。彼は、社会は常に「支配する少数者」と「支配される多数者」に分かれており、支配層であるエリートは、時間とともにその構成員が入れ替わっていくという「エリートの循環」の概念を提示しました。
パレートによれば、エリートの交代は、支配層内部の腐敗や堕落、あるいは被支配層からの新たなエリートの台頭によって引き起こされます。この循環的な社会変動論は、歴史における革命や政変のメカニズムを説明する上で重要な視点を提供するものとして注目されています。