## シジウィックの倫理学の方法の力
直観と経験の調和
シジウィックの倫理学の方法の特徴は、道徳哲学における伝統的な二項対立、すなわち直観主義と経験主義の統合を試みた点にあります。彼は、道徳的判断の根拠として、人間の理性に内在する自己明白な道徳原理（直観）を重視する一方で、経験的な観察や帰納的推論もまた、倫理学の構築に不可欠な要素であると主張しました。
方法論的懐疑主義と反省的均衡
シジウィックは、いかなる道徳理論も、それが依拠する前提を完全に正当化することはできないという方法論的懐疑主義の立場をとっていました。彼は、特定の道徳原理を絶対的な真理として盲信するのではなく、さまざまな道徳的見解を批判的に吟味し、相互に比較検討することを通じて、最も整合性が高く、経験的な事実とも整合的な倫理体系を構築しようとしました。このプロセスは「反省的均衡」と呼ばれ、シジウィック倫理学の中核的な方法論となっています。
常識道徳の重視
シジウィックは、哲学者の構築する抽象的な理論体系よりも、一般の人々が日常生活の中で実際に抱く道徳的信念や判断を重視しました。彼は、常識道徳には長年の経験と反省の蓄積が反映されており、倫理学の出発点として重要な洞察を提供すると考えました。ただし、常識道徳はしばしば矛盾や不整合を含んでいるため、反省的均衡を通じて、より洗練された体系へと再構成される必要があると主張しました。