## カントの人倫の形而上学・法論の力
###
普遍的な道徳法則の探求
カントの『人倫の形而上学・法論』は、感情や経験的な結果に左右されない、普遍的な道徳法則を確立しようと試みた書です。カントは、人間の理性そのものに、道徳的な判断を下すための普遍的な原理が内在していると主張しました。彼はこれを「定言命法」と呼び、道徳的行為の根拠をここに求めました。
###
自律としての自由
カントは、人間が道徳的に行為できるためには、自由意志、すなわち自律が不可欠であると考えました。彼は、欲望や外的要因に突き動かされるのではなく、自らに課した法則に従って行為するとき、人間は真に自由であるとしました。そして、この自律こそが、人間の尊厳の根拠となると主張しました。
###
義務としての道徳
カントは、道徳的な行為を、単なる「善」の追求ではなく、「義務」として捉えました。彼は、道徳法則に従うことは、それが個人の幸福や利益に合致するか否かに関わらず、理性的な存在として人間に課せられた義務であるとしました。この義務感は、個人の感情や状況を超越した、普遍的な道徳法則の拘束力を示しています。
###
理性に基づく社会
カントは、『人倫の形而上学・法論』の中で、法と国家についても論じています。彼は、法は個人の自由を相互に保障するために必要なものであり、理性に基づいて構築されるべきだと考えました。また、国家は個人の権利を保障し、道徳的な社会を実現するための手段として捉えられました。