## ラートブルフの法哲学の世界
法の相対主義と自然法
グスタフ・ラートブルフは、法実証主義の限界を痛感し、法の相対主義と自然法の考え方を提示した法哲学者です。彼は、法には法的安定性、目的適合性、正義という三つの価値次元が存在すると考えました。
法の三つの価値次元
ラートブルフによれば、法は単なる制定法にとどまらず、以下の三つの価値次元を内包しています。
* **法的安定性:** 法は予測可能性と信頼性を確保するために、安定している必要があります。
* **目的適合性:** 法は社会の具体的な目的に適合し、その実現に貢献しなければなりません。
* **正義:** 法は、すべての人々の平等と尊厳を保障するものでなければなりません。
法的不確実性と超法的な法
ラートブルフは、ナチス政権下における法の経験から、法の相対主義がもたらす危険性を認識していました。彼は、法が単なる権力の道具と化し、法的安定性と正義を欠いた場合、「法的不確実性」が生じると考えました。
このような状況においては、ラートブルフは「超法的な法」の存在を認め、不正義な法に抵抗する権利を擁護しました。ただし、彼は「超法的な法」の適用には慎重な判断が必要であるとも強調しました。
法解釈における価値判断
ラートブルフは、法の適用において、裁判官は単に条文を機械的に適用するのではなく、法の三つの価値次元を考慮した「価値判断」を行うべきだと主張しました。彼は、裁判官が法の背後にある価値を理解し、個々のケースに最も妥当な判断を下すことの重要性を説きました。