ボーンの原子物理学の原理の世界
原子模型と量子論の黎明期
マックス・ボルンの「原子物理学の原理」は、1935年に初版が出版された、原子物理学の黎明期における重要な教科書です。当時、古典物理学では説明できない現象が原子レベルで次々と発見され、新たな理論体系である量子力学が構築されつつありました。ボルン自身も量子力学の創始者の一人であり、行列力学の創始や確率解釈の提唱など、量子力学の発展に大きく貢献しました。
本書の内容と特徴
「原子物理学の原理」は、当時の最新の知見に基づき、原子物理学の基礎的な事柄から当時の最先端のトピックまでを網羅的に解説しています。古典物理学から出発し、量子論の基礎的な概念、原子スペクトルと原子構造、量子力学の基本的な方程式、分子の構造と性質、固体物理学の基礎など、幅広いテーマを扱っています。
本書の特徴としては、数学的な厳密さを保ちつつも、物理的なイメージを重視した分かりやすい説明が挙げられます。また、当時の実験結果と理論との比較や、未解決の問題点についても詳しく解説されており、読者は量子力学が発展途上の、活気あふれる分野であったことを実感することができます。
現代における本書の意義
「原子物理学の原理」は、初版の出版から80年以上が経過した現在でも、量子力学の古典として、また、原子物理学の入門書として、世界中の多くの読者に読まれ続けています。当時の物理学者たちの思考過程を追体験できる貴重な資料としても、その価値は失われていません。