プルードンの経済的諸矛盾の体系の世界
プルードンの思想的背景
ピエール・ジョゼフ・プルードン（1809-1865）は、フランスの政治思想家、社会主義者、無政府主義の父として知られています。彼は、私有財産を「盗みである」と宣言したことで有名ですが、その思想は複雑で多岐にわたります。プルードンは、ヘーゲルやアダム・スミスなどの思想の影響を受けながら、独自の経済理論と社会理論を展開しました。
「経済的諸矛盾の体系」の概要
1846年に出版された「経済的諸矛盾の体系、あるいは窮乏の哲学」は、プルードンの主要な著作の一つです。この著作でプルードンは、当時の資本主義経済が抱える矛盾を鋭く批判しました。彼は、資本主義経済が、生産の無秩序性、富の不平等な分配、労働者の搾取などの問題を生み出していると主張しました。
「経済的諸矛盾」の具体例
プルードンが指摘した「経済的諸矛盾」の具体例としては、以下のようなものがあります。
* **価値の矛盾:** プルードンは、古典派経済学の価値理論を批判し、労働価値説を採用しました。彼は、商品の価値は、それを生産するために費やされた労働量によって決まると主張しました。しかし、現実の市場では、需要と供給の関係によって価格が変動するため、労働価値と市場価格の間には矛盾が生じると指摘しました。
* **分業の矛盾:** プルードンは、アダム・スミスが提唱した分業のメリットを認めつつも、それが労働者の専門化と疎外をもたらすと批判しました。彼は、分業によって労働者が単一の作業に特化すると、労働の喜びや創造性を失い、機械の一部のように扱われるようになると考えました。
* **競争の矛盾:** プルードンは、資本主義経済における競争は、必ずしも効率性や進歩をもたらすとは限らないと主張しました。彼は、競争は、企業間の過剰な競争や独占、そして労働者の搾取を生み出す可能性があると指摘しました。
プルードンの解決策：相互主義
プルードンは、資本主義経済の矛盾を克服するために、「相互主義」と呼ばれる社会システムを提唱しました。相互主義は、国家の介入を最小限に抑え、個人の自由と平等を重視する社会です。彼は、労働者が生産手段を所有し、互いに協力して生産活動を行う協同組合の設立を提唱しました。また、彼は、金利を廃止し、労働者が自分の労働の成果を公平に分配されるべきだと主張しました。