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ラシーヌのブリタニクス の世界

## ラシーヌのブリタニクス の世界

舞台設定

ラシーヌの悲劇『ブリタニクス』の舞台は、古代ローマ帝国の首都ローマ、ネロ帝政期の宮廷です。 劇はネロが皇帝の座についてからわずか5ヶ月後、西暦55年の出来事として描かれます。

登場人物

劇には、歴史上の人物であるネロ、ブリタニクス、アグリッピナ、ジュニア、ナルキッソスの5人の主要人物が登場します。

* **ネロ:** ローマ皇帝。 若く、権力欲に駆られ、冷酷な性格。 義母のアグリッピナと、異母兄弟のブリタニクスを排除しようと目論む。
* **ブリタニクス:** クラウディウス帝の実子であり、ネロの異母兄弟。 正統な皇位継承者と目されるが、ネロに幽閉され、権力を奪われている。
* **アグリッピナ:** ネロの母であり、クラウディウス帝の未亡人。 権力に執着し、息子ネロを皇帝にするために暗殺などの陰謀を企てる。 しかし、ネロの権力掌握を恐れるようになる。
* **ジュニア:** ブリタニクスの恋人。 美しく、純粋で、ブリタニクスへの愛に忠実。 ネロに求婚されるが、拒絶する。
* **ナルキッソス:** ネロの側近。 冷酷で狡猾な策略家。

テーマ

* **権力と欲望:** ネロは、権力への渇望から、冷酷な行為に走り、周囲の人間を不幸に陥れます。 彼の権力欲は、アグリッピナとの対立、ブリタニクスへの嫉妬、ジュニアへの歪んだ愛情など、様々な形で表現されます。
* **愛と裏切り:** ジュニアとブリタニクスの純粋な愛は、ネロの権力欲によって脅かされます。 また、アグリッピナは、息子への愛と権力欲の間で葛藤し、最終的にはネロに裏切られることになります。
* **運命と自由意志:** ブリタニクスは、皇帝の息子として生まれながら、ネロの陰謀によって悲劇的な運命を辿ります。 彼の運命は、古代ローマの権力闘争に翻弄される人間の無力さを象徴しています。

作風

『ブリタニクス』は、古典主義の三原則(時の一致、場所の一致、 Handlungseinheit)を厳密に守った古典悲劇です。
簡潔で洗練された文体、登場人物の心理描写の巧みさ、劇的な展開などが特徴として挙げられます。

これらの要素が組み合わさり、『ブリタニクス』は権力と愛憎が渦巻く古代ローマ宮廷の閉塞感と、そこに生きる人間たちの悲劇を描き出す作品となっています。

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