## フォークナーのアブサロム、アブサロム！の世界
物語の舞台と時代
本作の物語は、主に19世紀のアメリカ南部、ミシシッピ州の架空の郡であるヨークナパトーファ郡を舞台としています。南北戦争とその後の再建時代を背景に、コンプソン家とサトペン家の興隆と衰退が、過去と現在を交錯させながら描かれます。
主要な登場人物
物語の中心となるのは、トーマス・サトペンとその家族です。サトペンは、貧しいながらも野心的な人物で、自らの手で財産と地位を築き上げようとします。しかし、彼の野心は、家族や周囲の人々に悲劇をもたらすことになります。
* **トーマス・サトペン:** 物語の鍵となる謎めいた人物。彼の過去と、彼が築こうとした王国は、物語の重要な要素となります。
* **クウェンティン・コンプソン:** 物語の語り手の一人。サトペン家の物語に深く関わり、その謎を解き明かそうとします。
* **ローザ・コールドフィールド:** サトペン家の隣人で、サトペン家の歴史に翻弄される女性。物語の語り手の一人であり、独自の視点からサトペン家について語ります。
物語の構造と語り口
本作は、複数の語り手によって、断片的に語られるという複雑な構造を持っています。それぞれの語り手が、異なる視点や解釈でサトペン家の歴史を語るため、読者は、パズルのピースを組み合わせるように、物語の全体像を掴んでいくことになります。
* **語り手の多重性:** クウェンティン、ローザ、クウェンティンの父親など、複数の語り手がそれぞれの視点から物語を語ります。
* **時間の流れの複雑さ:** 過去と現在が交錯し、物語は時chronologicalな順番に語られるわけではありません。
主要なテーマ
本作は、南部社会における人種、階級、家族、歴史、記憶、罪といった、複雑なテーマを扱っています。
* **人種と階級:** サトペンは、白人と黒人の混血児を拒絶し、自身の血統に固執します。これは、当時の南部社会における人種差別と階級社会を反映しています。
* **家族の崩壊:** サトペン家の崩壊は、過去の罪と、家族の複雑な関係がもたらす悲劇を描いています。
* **歴史と記憶:** 物語は、過去が現在にどのように影響を与えるかを、登場人物たちの記憶を通して探求しています。
フォークナーの作品における位置づけ
本作は、フォークナーの代表作の一つとされ、その複雑な構造と、南部社会に対する鋭い洞察が高く評価されています。彼の特徴的な文体と、時間軸を自在に操る実験的な手法が、本作でも存分に発揮されています。