## チョーサーのカンタベリー物語の世界
チョーサーのカンタベリー物語は、14世紀後半のイギリス社会の縮図を描写しています。
物語は、社会の様々な階層出身の巡礼者たちが、ロンドン郊外のサザクからカンタベリー大聖堂にあるトマス・ベケットの聖廟への旅路を共にします。道中、巡礼者たちはそれぞれが物語を語り合い、その内容は恋愛、宗教、社会風刺、道徳など多岐にわたります。
物語は、当時の社会における階級制度を明確に反映しています。
騎士や修道院長といった上流階級の人々は、洗練された言葉遣いをし、高貴な行動様式で描かれています。一方、商人や職人などの中流階級の人々は、現実的で、時には貪欲な一面も覗かせます。そして、貧しい農民や労働者たちは、物語の中でしばしば嘲笑の対象となります。
宗教は、カンタベリー物語において重要なテーマです。
巡礼者たちは皆、宗教的な目的を持ってカンタベリーを目指しており、道中での会話や行動にも宗教的な影響が色濃く反映されています。しかし、当時の教会の腐敗や偽善に対する批判も物語には散りばめられています。例えば、免罪符売りの悪徳商人や、信仰よりも快楽を追求する修道士などが描かれています。
カンタベリー物語は、中世英語で書かれた文学作品としても重要な意味を持ちます。
チョーサーは、それまでラテン語が主流だった文学の世界に、英語を用いることで、新しい時代を切り開きました。彼の作品は、現代の読者にとっても、当時のイギリス社会や人々の生活を知る上で貴重な資料となっています。