ピグーの厚生経済学の原点
ピグーの思想的背景
アーサー・セシル・ピグー(Arthur Cecil Pigou, 1877-1959)は、イギリスの経済学者であり、ケンブリッジ大学で経済学を講じました。彼は、当時の経済学界の重鎮であったアルフレッド・マーシャルの弟子であり、その後継者と目されていました。ピグーの経済学は、マーシャルの経済学を継承発展させたものとして、新古典派経済学の一つの到達点を示すものでした。
厚生経済学の基礎
ピグーの経済学における最大の貢献は、何と言っても厚生経済学の体系化にあります。彼は、1912年に出版した『Wealth and Welfare(富と厚生)』において、資源の最適配分と社会全体の厚生との関係を分析し、後の厚生経済学の基礎を築きました。
功利主義の影響
ピグーの厚生経済学は、ジェレミー・ベンサムやジョン・スチュアート・ミルなどの功利主義思想に強く影響を受けています。ピグーは、功利主義の根本原理である「最大多数の最大幸福」を実現するために、政府が経済活動に介入することの必要性を主張しました。
外部経済効果の概念
ピグーは、市場メカニズムが必ずしも社会全体の厚生を最大化しない場合があることを指摘し、その原因の一つとして「外部経済効果」の概念を提唱しました。外部経済効果とは、ある経済主体の活動が、市場を通じて媒介されることなく、他の経済主体に影響を与える効果のことです。
政府の役割
ピグーは、外部経済効果の存在が市場の失敗を引き起こし、資源の最適配分を阻害すると考えました。そして、政府が課税や補助金などの政策によって外部経済効果を是正し、社会全体の厚生を向上させるべきだと主張しました。