## シェリングの人間的自由の本質の原点
シェリングにおける自由概念の根幹
シェリングにとって、自由は単なる選択の自由や外部からの強制の不在といった表面的なものではありません。彼は、人間の自由の本質を「**存在論的自由**」という概念で捉えました。これは、人間存在そのものに深く根ざした、自らを規定し、創造していく力、すなわち「**自己基底化**」の能力を意味します。
フィヒテ哲学の影響
シェリングの自由概念は、先駆者であるフィヒテの哲学から大きな影響を受けています。フィヒテは、「自我」が自らを自らに与え、世界を構成していくという「**自我の自己設定**」の思想を展開しました。シェリングはこの思想を継承し、自由を「**無からの創造**」ではなく、「**根拠づけられない根拠**」としての自己の確立として理解しました。
自然と精神の統一
シェリングは、フィヒテが重視した「自我」だけでなく、「自然」にも目を向けました。彼は、自然と精神は本来不可分なものであり、自由は両者の統一された根源から生じると考えました。自然は、精神が自らの中に無意識的に設定した「**無意識的な意志**」の産物であり、自由はこの無意識的な意志を意識的な活動へと高めていくプロセスと捉えられます。
悪の問題と自由の有限性
シェリングは、自由の根源を問う中で、必然的に「悪」の問題に直面します。なぜなら、完全な自由は悪をも含む可能性を孕んでいるからです。彼は、悪を単なる「善の欠如」ではなく、「**自由の現実的な可能性**」として捉えました。そして、自由は無限ではなく、有限なものであることを認めました。
自由と理性
シェリングは、自由は単なる気まぐれな選択ではなく、「**理性**」と深く結びついていると考えました。理性は、自由の根拠であると同時に、自由を導く力でもあります。彼は、真の自由とは、理性に従って自己を規定し、世界と調和していくことであるとしました。