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ダンテの『神曲』天国篇のテクストについて

## ダンテの『神曲』天国篇のテクストについて

ダンテの『神曲』天国篇は、地獄篇、煉獄篇に続く三部作の最終章であり、ベアトリーチェの導きにより、ダンテが至高天へと至るまでの旅路を描いています。

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言語と韻律

* 『神曲』全体を通して、 terza rima と呼ばれるaba bcb cdc… という独特の韻律が用いられています。この韻律は、三行一組の連句が、前の連句の真ん中の行と韻を踏むことで連鎖していく形式であり、ダンテ自身が考案したと言われています。
* 天国篇では、地獄篇や煉獄篇と比較して、ラテン語由来の語彙や抽象的な表現が増加し、より高尚で荘厳な文体が特徴となっています。これは、天国という神聖な世界を描写する上で、より洗練された表現を用いる必要があったためと考えられています。

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象徴主義と寓意

* 天国篇は、キリスト教的世界観に基づいた象徴主義と寓意に満ちています。ダンテは、天球の構造や天上に住まう聖人たちの姿を通して、神の愛や救済、人間の魂の浄化といった深遠なテーマを表現しています。
* 例えば、ベアトリーチェは、単なるダンテの恋愛対象ではなく、神の恩寵や信仰の象徴として描かれています。また、各天球は、それぞれ異なる徳を表しており、ダンテは天球を昇るごとに、より高次の精神的な段階へと進んでいきます。

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構成

* 天国篇は、月天、水星天、金星天、太陽天、火星天、木星天、土星天、恒星天、原動天、至高天の10の天球から構成されています。
* ダンテはベアトリーチェと共に、これらの天球を順番に巡り、それぞれの天球で聖人たちと対話し、教訓を得ていきます。そして、最終的に至高天にて神の光を仰ぎ見ることで、魂の救済へと至ります。

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神学と哲学

* 天国篇には、当時の神学や哲学の知識が色濃く反映されています。ダンテは、トマス・アクィナスの思想の影響を強く受けており、天国篇においても、神の存在証明や三位一体論、魂の不滅性といった神学的なテーマが議論されています。
* また、アリストテレス哲学の影響も大きく、天球の構造や天体の運行に関する記述には、アリストテレスの宇宙論が反映されています。

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歴史的人物

* 天国篇には、聖書の登場人物だけでなく、歴史上の人物も多数登場します。ダンテは、これらの歴史的人物をそれぞれの時代や業績、人物像に合わせて、適切な天球に配置しています。
* 例えば、ローマ皇帝ユスティニアヌスは、法典を編纂した功績から、正義を司る木星天に配置されています。また、詩人としてダンテが敬愛するウェルギリウスは、異教徒であったため天国には行けませんが、ダンテを地獄と煉獄の旅に導いた案内人として登場します。

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