## レーニンの唯物論と経験批判論の技法
レーニンの論敵批判
レーニンは本書において、当時のロシアにおけるマッハ主義や経験主義の流行を、マルクス主義哲学（弁証法的唯物論）の見地から批判しています。その際、レーニンは単に自身の主張を展開するだけでなく、論敵の著作や発言を詳細に引用し、その矛盾点を徹底的に突くという技法を多用しています。レーニンは、論敵の主張を彼らの言葉自体を用いて批判することで、自身の主張の正当性をより明確に示そうとしたと考えられます。例えば、ボグダーノフ、バザーロフ、ユシケーヴィチといったロシアのマッハ主義者たちの著作を引用し、彼らの主張がいかに不徹底で矛盾に満ちているかを具体的に示しています。
弁証法と唯物論の結合
レーニンは本書において、弁証法と唯物論を不可分に結びつけています。レーニンにとって、弁証法は自然界と社会における発展の法則を明らかにするものであり、唯物論は世界を物質的なものとして捉える立場です。レーニンは、これらの二つの要素を組み合わせることで、世界を絶えず運動し変化する物質的なものとして理解し、その発展の法則を明らかにしようとしました。
豊富な引用
レーニンは本書において、自身の主張を補強するために、膨大な量の引用を用いています。引用されるのは、マルクスやエンゲルスの著作はもちろんのこと、哲学、自然科学、歴史など、多岐にわたる分野の文献です。レーニンは、これらの引用を用いることで、自身の主張が単なる個人的な見解ではなく、広範な知識に基づいた普遍的なものであることを示そうとしたと考えられます。
論理とレトリック
レーニンは本書において、論理的な思考と巧みなレトリックを駆使しています。レーニンは、複雑な哲学的概念を明快な言葉で説明し、読者が理解しやすいように論理的な構成を心がけています。一方で、比喩や反語、皮肉などを効果的に用いることで、読者の感情に訴えかけ、自身の主張を強く印象づけようともしています。
実践との結びつき
レーニンは、哲学を単なる観念的な思索ではなく、現実を変革するための実践と結びついたものとして捉えていました。レーニンは本書においても、当時のロシア革命運動の状況を踏まえ、哲学的な議論が持つ実践的な意味合いを強調しています。レーニンにとって、マッハ主義のような観念論的な哲学は、労働者階級の革命運動を阻害するものであり、唯物論に基づいたマルクス主義哲学こそが、革命を成功に導くための理論的な武器になると考えていました。