モリエールのタルチュフの技法
登場人物描写
劇中の登場人物描写は類型化された人物像と写実的な人物像を巧みに使い分けることで、喜劇としての面白さと社会風刺の鋭さを両立させています。
オルゴンやマダム・ペルネルのように、ある特定の性質や考え方に固執する滑稽な姿を描くことで、風刺の対象を明確化し、観客に笑いを誘います。
一方で、エルミールやクレアントなど、常識的な思考を持つ人物は、より人間味あふれる描写がなされています。
風刺
モリエールは、当時のフランス社会に蔓延していた偽善や宗教的欺瞞を鋭く風刺しています。
タルチュフは、敬虔な信者と見せかけて、オルゴンの家財や家族につけ込もうとする、まさに偽善者の象徴として描かれています。
彼の巧みな話術や立ち振る舞いは、当時の宗教界における腐敗や欺瞞を痛烈に批判するものです。
喜劇的要素
モリエールは、登場人物たちの滑稽な行動やセリフ、状況の意外な展開など、様々な喜劇的要素を駆使しています。
特に、タルチュフの偽善が次々と露呈していく場面や、オルゴンの盲信ぶりが笑いを誘います。
また、韻文を用いた軽快なセリフ回しや、テンポの良い場面展開も、観客に笑いを提供しています。
伏線と逆転
モリエールは、物語の随所に伏線を張り巡らせ、観客の予想を裏切る展開を用意することで、サスペンスを生み出しています。
例えば、タルチュフの正体やオルゴンの盲信ぶりは、早い段階から暗示されますが、それが最終的にどのような結末を迎えるのかは、最後までわかりません。