バルザックのゴリオ爺さんの技法
人物描写
バルザックは、登場人物の容姿、服装、行動、言葉遣いなどを細かく描写することで、読者に登場人物の性格や社会的地位、内面までも鮮やかに印象づけます。特にゴリオ爺さんの描写は、物語が進むにつれてその悲惨さが増していく様子が克明に描かれ、読者の感情に強く訴えかけます。
対比
作品全体を通して、様々な対比が効果的に用いられています。裕福なヴォートランと貧しいラスティニャック、純粋な娘たちと計算高い愛人たち、華やかな社交界と陰惨な下宿屋など、対照的な要素を並置することで、当時の社会の矛盾や人間の二面性が浮き彫りになります。
伏線
物語の随所に、後の展開を暗示するような描写やセリフがちりばめられています。例えば、ゴリオ爺さんが娘たちに財産を全て与えてしまったという事実や、ラスティニャックが野心に目覚めていく様子などは、初期の段階から少しずつ読者に提示されます。
詳細な描写
バルザックは、舞台となるパリの街並み、登場人物が住む部屋の様子、食事のメニューに至るまで、事細かに描写することにこだわっています。こうした詳細な描写は、単なる背景描写に留まらず、登場人物の心理状態や社会全体の雰囲気を描き出す上で重要な役割を果たしています。
自由間接話法
バルザックは、三人称小説でありながら、登場人物の視点から物語を語る「自由間接話法」を効果的に用いています。これにより、登場人物の心情や考えを読者に直接的に伝えることなく、自然な形で理解させることができます。