Skip to content Skip to footer

プラトンの饗宴の話法

プラトンの饗宴の話法

登場人物による語りの構造

『饗宴』は、アポロドーロスが友人との会話の中で、過去に聞いた話を語るという入れ子構造を持つことで知られています。まず、アポロドーロスが友人に、アガトンの勝利を祝う宴でソクラテスたちが愛について語った時のことを聞かされます。しかし、アポロドーロス自身はその宴には参加しておらず、友人から話を聞いたり、ソクラテスに直接確認したりしたと述べています。さらに、宴での語りは、参加者の一人であったアリストデモスからソクラテスに伝えられ、ソクラテスを通してアポロドーロスへと至ります。このように、物語は幾重にも語り手が入れ替わる複雑な構成となっています。

対話形式による多様な見解の提示

『饗宴』は、登場人物たちの対話によって進行する対話篇という形式をとっています。愛について、パイドロス、パウサニアス、エリクシマコス、アリストファネス、アガトン、ソクラテスなどがそれぞれの立場から持論を展開します。それぞれの speeches は独立しており、愛に関する多様な解釈を提示しています。例えば、パイドロスは愛を神々のなかでも最も古く偉大な神とし、パウサニアスは天上的愛と地上的愛を区別し、エリクシマコスは医学や音楽など様々な分野における愛の働きを論じています。

劇的な演出と登場人物の描写

『饗宴』では、単に登場人物が持論を述べるだけでなく、彼らの発言や行動、周囲の状況などが生き生きと描写されています。例えば、アルキビアデスが酔って乱入してくる場面や、ソクラテスが朝まで飲み続けながらも全く酔っていない様子などは、劇的な効果を生み出しています。また、登場人物たちの性格や関係性も丁寧に描かれており、彼らの発言の背後にある思想や感情をより深く理解することができます。

神話や比喩を用いた表現

『饗宴』では、登場人物たちが愛について語る際に、神話や比喩が頻繁に用いられています。例えば、アリストファネスは、かつて人間は球体で両性具有であったという神話を通して、愛は本来の姿を求める欲求であると説明します。また、ソクラテスは、ディオティマという女性から聞いた話として、愛は美しいものへの憧憬から始まり、やがて永遠の美そのものを求めるようになるという「愛の段階説」を展開します。これらの神話や比喩は、抽象的な概念である「愛」をより具体的にイメージさせ、読者の理解を助ける役割を果たしています。

Amazonで詳細を見る

Leave a comment

0.0/5