## ギゾーのヨーロッパ文明史の話法
### 1. 歴史叙述における「文明」概念の位置づけ
ギゾーの『ヨーロッパ文明史』はそのタイトルが示す通り、「文明」概念を軸に歴史を叙述した作品です。彼は単なる政治史や戦争史ではなく、ヨーロッパ社会全体の精神的・物質的な発展過程を「文明」として捉え、その進歩を明らかにしようと試みました。特に、古代ギリシャに端を発し、キリスト教文化やゲルマン民族の要素を取り込みながら発展してきたヨーロッパ文明の独自性を強調しています。
### 2. 進歩史観と歴史における法則性
ギゾーは歴史が常に進歩発展するという進歩史観を基盤としています。彼は、ヨーロッパ文明が様々な困難や危機を乗り越えながらも、理性や自由といった普遍的な価値観に基づき、進歩を遂げてきたと主張しました。また、歴史の進歩には一定の法則性があると見なし、その法則を明らかにすることで未来を予測することも可能だと考えました。
### 3. 理性と自由の重視 – フランス革命との関連性 –
ギゾーは歴史の進歩を促す原動力として、「理性」と「自由」を重視しました。彼は、人間の理性による啓蒙と、個人の自由な活動が社会の発展に不可欠であると考えました。これは、彼が実際に経験したフランス革命の影響を強く受けており、革命を通して実現しようとした理念が色濃く反映されています。
### 4. 比較史的手法の導入と多様な資料の活用
ギゾーはヨーロッパ文明の独自性を際立たせるために、他文明との比較を積極的に行いました。イスラム文明や中国文明などとの比較を通して、ヨーロッパ文明の特徴を浮き彫りにしようと試みています。 また、政治史的な出来事だけでなく、文学、芸術、思想、社会制度など、多岐にわたる資料を活用し、多角的な視点から歴史を描写しようとしました。
### 5. 明晰で流麗な文体による叙述 – 広範な読者層への訴求 –
ギゾーは歴史を専門とする学者だけでなく、一般の読者層にも広く歴史を理解してもらおうと考えました。そのため、専門用語を避け、明晰で流麗な文体を用いることで、歴史叙述の分かりやすさを重視しました。 結果として、彼の著作は当時のフランス社会で広く読まれ、大きな影響力を持つことになりました。