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ブロンテの嵐が丘の話法

## ブロンテの嵐が丘の話法

語り手の構造

「嵐が丘」の語り手は入れ子構造になっている点が特徴です。

* **第一の語り手:ロックウッド氏**

「嵐が丘」の物語は、ロンドンからヨークシャーの荒野にある「嵐が丘」へとやって来た、内向的でよそよそしいロックウッド氏の視点から語られます。彼は物語の狂言回し的な役割を担い、物語の主な出来事には直接関わらず、家政婦のネリー・ディーンから過去の出来事を聞かされます。

* **第二の語り手:ネリー・ディーン**

ネリーは、「嵐が丘」とその隣人である「画眉山荘」の住人たちの人生に深く関わってきた人物です。彼女は、ヒースクリフ、キャサリン、ヒンドリー、イザベラといった主要人物の複雑な関係を、自身の経験に基づいて語ります。

* **その他の語り手**

ネリー以外にも、イザベラがヒースクリフに宛てた手紙の一部がそのままの形で挿入されるなど、一時的に視点が移る箇所があります。また、物語の終盤では、ネリーの視点から、ヒースクリフの息子リントンから聞いた話が語られます。

語りの特徴

* **多層的な視点**

複数の語り手を用いることで、物語は多層的な構造となり、登場人物たちの心理や出来事に対する解釈の多様性が浮かび上がります。特に、ネリーの主観的な語り口は、読者に彼女自身の偏見や解釈を意識させると同時に、登場人物たちの真意を推測する余地を与えています。

* **回想形式による時間軸の操作**

物語は、ロックウッド氏がネリーから過去の出来事を聞くという回想形式で進行します。このため、時間軸は現在と過去の間を行き来し、読者は断片的に情報を得ながら、複雑に絡み合った人間関係や事件の真相に迫っていきます。

* **方言を用いた描写**

ネリーやヒースクリフなど、ヨークシャーの荒野で育った人物たちの台詞には、方言が用いられています。これにより、登場人物たちの生きた時代や社会的な背景が鮮明に表現され、物語にリアリティを与えています。

* **ゴシック的な雰囲気の醸成**

荒涼としたヨークシャーの荒野を舞台に、嵐、廃墟、幽霊といったゴシック小説的なモチーフが効果的に用いられています。また、登場人物たちの激しい情熱や狂気、復讐心といった内面も、物語に暗い影を落とします。

「嵐が丘」は、その複雑な語り口と巧みな話法により、人間の愛憎や階級社会の矛盾、自然と人間の対立といった普遍的なテーマを描き出すことに成功しています。

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