フォークナーのアブサロム、アブサロム!と作者
フォークナーの南部と歴史観
ウィリアム・フォークナーは、アメリカ南部ミシシッピ州生まれの作家であり、そのほとんどの作品は架空のヨクナパトーファ郡を舞台としています。 「アブサロム、アブサロム!」もこのヨクナパトーファ郡を舞台としており、南北戦争以前から20世紀初頭にかけてのサトペン家の興亡を描いています。フォークナーの作品は、南部の歴史、人種、階級、家族といったテーマを特徴としており、「アブサロム、アブサロム!」もこれらのテーマを色濃く反映しています。
語り手と物語構造
「アブサロム、アブサロム!」は、複数の語り手によって語られる複雑な物語構造を持っています。この手法は、フォークナーの作品に共通して見られる特徴です。主要な語り手には、 Quentin Compson、 Rosa Coldfield、Shreve McCannonなどがいます。それぞれが異なる視点、解釈、偏見を持ってサトペン家の歴史を語り継いでいきます。フォークナーは、この多様な語りを通して、歴史の曖昧性、真実の相対性といったテーマを探求しています。読者は、断片的な情報をつなぎ合わせ、それぞれの語り手の信頼性を吟味しながら、自分自身でサトペン家の真実を構築していくことを求められます。
時間と記憶
フォークナーの作品では、時間と記憶は直線的ではなく、複雑に絡み合っています。「アブサロム、アブサロム!」でも、過去と現在が交錯し、登場人物たちの記憶が物語に大きく影響を与えます。読者は、時間の流れに翻弄されながらも、断片的な情報を手掛かりに、サトペン家の歴史を再構築していくことになります。この複雑な時間軸と記憶の構成は、歴史認識の困難さ、過去の影が現在に及ぼす影響などを浮き彫りにしています。