## デフォーのロビンソン・クルーソーの光と影
光:理性と進歩、そして信仰
ダニエル・デフォーの『ロビンソン・クルーソー』は、無人島に漂着した男が、理性と努力によって過酷な環境を克服し、生き抜いていく物語です。クルーソーは絶望的な状況に置かれながらも、持ち前のポジティブ思考と行動力で、サバイバル生活に必要な技術や知識を習得していきます。
彼は難破船から様々な道具や物資を回収し、住居を建設し、食料を確保するために農耕や牧畜を始めます。彼は経験を通して学習し、試行錯誤を繰り返しながら、島の環境に適応していきます。その過程はまさに、人間の理性と進歩の可能性を示すものと言えるでしょう。
また、クルーソーは聖書を読み解くことで、信仰の力を再認識し、苦難に立ち向かう精神的な支えを得ます。彼は神の摂理を信じ、絶望の淵に立たされながらも希望を捨てず、生き抜くことへの意志を持ち続けます。
影:植民地主義と支配、そして孤独
一方、『ロビンソン・クルーソー』は、当時のヨーロッパ社会に蔓延していた植民地主義や帝国主義を肯定的に描いている側面も持ち合わせています。クルーソーは島を「自分の王国」とみなし、出会った「未開人」フライデーを「奴隷」として支配下に置きます。
彼はフライデーに英語やキリスト教を教え込み、ヨーロッパ的な価値観を押し付けることで、彼を「文明化」しようと試みます。このような態度は、非西洋文化に対する偏見や優越意識に基づいたものであり、現代の視点から見ると批判的な見方もできます。
さらに、クルーソーの物語は、人間が本来社会的な存在であることを浮き彫りにしています。彼は長年の孤独の中で、人間的な触れ合いや温かさを切望し続けます。フライデーとの出会いは、彼の孤独を癒やすと同時に、人間関係の複雑さや葛藤をもたらします。