## キケロの義務について
キケロの「義務について」に対する批評
「義務について」(De Officiis)は、古代ローマの政治家、哲学者であったマルクス・トゥッリウス・キケロによって紀元前44年に書かれた哲学書です。ストア派の哲学者パナエティオスの説に基づいており、 正義、道徳、義務、名誉、そして公益のために私欲を犠牲にすることについて論じています。 本書は出版以来、西洋思想、特に政治思想や倫理思想に多大な影響を与えてきました。
賞賛
「義務について」は、その実用的な知恵、明確な文章、そして時代を超越したテーマによって広く賞賛されています。キケロは、抽象的な哲学的議論に陥ることなく、日常生活における道徳的なジレンマに焦点を当てています。 彼の文章は簡潔で読みやすく、複雑な思想を理解しやすい形で提示しています。 また、本書で扱われているテーマ、例えば義務、正義、勇気などは、今日でもなお重要な意味を持ち続けています。
具体的には、以下のような点が賞賛されています。
* **実用的な道徳哲学**: キケロは、日常生活で実際に役立つ道徳哲学を提示することに重点を置いています。抽象的な議論ではなく、具体的な例や状況を用いて、読者が自身の行動をどのように改善できるかを具体的に示しています。
* **明瞭な文章**: キケロの文章は、その明瞭さと簡潔さで知られています。複雑な哲学的概念を、平易な言葉で分かりやすく説明しているため、専門的な知識がない読者でも理解しやすい点が評価されています。
* **時代を超越したテーマ**: 本書で扱われている義務、正義、名誉、公益などのテーマは、時代や文化を超えて普遍的なものです。そのため、現代社会においても、読者は自身の生活や行動を振り返る際の指針として、本書の教えから多くのことを学ぶことができます。
批判
「義務について」は広く賞賛されている一方で、いくつかの批判もあります。 例えば、一部の批評家は、本書が独創性に欠け、ストア派の哲学を単に繰り返しているだけだと主張しています。 また、キケロの政治的なキャリアと、本書で提示されている理想との間には矛盾があると指摘する批評家もいます。
具体的には、以下のような点が批判されています。
* **独創性の欠如**: キケロはストア派の思想に大きく影響を受けており、「義務について」の内容もその影響を色濃く反映しています。そのため、本書はストア派の哲学の焼き直しに過ぎず、キケロ自身の独創的な思想に欠けると批判されることがあります。
* **理想主義的すぎる**: キケロは、本書の中で理想的な政治家や市民のあり方について論じていますが、一部の批評家は、その理想があまりにも高く、現実の政治や社会では実現不可能だと批判しています。
* **政治的立場との矛盾**: キケロ自身は、ローマ共和政の政治家として権力闘争に身を置いていました。そのため、本書で説かれている高潔な道徳観と、現実の政治行動との間に矛盾が見られると指摘する声もあります。
これらの賞賛と批判は、「義務について」が長年にわたって多くの読者に影響を与え、様々な議論を巻き起こしてきたことを示しています.