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アウグスティヌスの告白の批評

## アウグスティヌスの告白の批評

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文学的視点からの批評

アウグスティヌスの『告白』は、その文学的価値の高さでも評価されています。

* **自伝の形式:** ローマ時代の自伝の伝統を受け継ぎながらも、 個人的な内面や宗教的な葛藤に焦点を当てた革新的な作品として評価されています。 単なる出来事の羅列ではなく、心理描写や哲学的思索を交えながら、自己の内面を深く掘り下げている点が画期的でした。
* **鮮やかな比喩表現:** アウグスティヌスは修辞学に通じており、その文体は比喩や隠喩、対比などを巧みに用いた、非常に修辞的で詩的なものです。 有名な「盗みの梨」のエピソードに見られる心理描写は、その象徴的な表現と相まって読者に強い印象を与えます。
* **劇的な構成:** 『告白』は、アウグスティヌスの回心という劇的な変化を中心とした構成で、読者を引き込む力を持っています。 神への祈りの言葉が随所に挿入され、内面の葛藤と信仰への道のりがドラマティックに描かれています。

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歴史的視点からの批評

『告白』は、当時の社会や文化、宗教を理解する上で貴重な史料としても評価されています。

* **ローマ帝国末期の状況:** 『告白』は、ローマ帝国末期の混沌とした社会状況や、伝統的な宗教観が揺らぎ始めていた時代の雰囲気を生き生きと伝えています。 マニ教にのめり込む人々や、アウグスティヌス自身の苦悩を通して、当時の宗教状況を垣間見ることができます。
* **キリスト教の初期の姿:** 『告白』は、キリスト教がまだ新しい宗教であった時代の信仰の姿を伝えています。 ローマ帝国内におけるキリスト教の広まりや、異端との対立など、初期キリスト教の歴史を知る上で重要な資料となっています。
* **古代末期の思想:** アウグスティヌスは、プラトン主義や新プラトン主義などの影響を受けながら、独自の思想を築き上げました。 『告白』には、古代末期の思想的潮流が反映されており、西洋思想史を理解する上でも重要な作品です。

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神学的視点からの批評

『告白』は、キリスト教神学の古典としても、後世に多大な影響を与えています。

* **原罪論:** アウグスティヌスは、『告白』の中で、人間の罪深さを強調し、神の恩寵の必要性を説いています。 特に、幼少期の「盗みの梨」のエピソードを通して、人間が生まれながらにして罪を持つ存在であるという「原罪論」を主張しました。
* **恩寵論:** アウグスティヌスは、人間の自由意志には限界があり、救済は神の無償の恵みである「恩寵」によってのみもたらされると説いています。 自身の回心の経験を通して、神の恩寵の力強さを証言しています。
* **予定説:** 『告白』では、神が世界の歴史と人間の救済をあらかじめ定めているという「予定説」の萌芽を見ることができます。 この考え方は、後のカルヴァン主義などに大きな影響を与えました。

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