## ワイルドのドリアン・グレイの肖像の批評
###
美と堕落の表裏一体
オスカー・ワイルドの唯一の長編小説「ドリアン・グレイの肖像」は、1890年の出版当時から賛否両論を巻き起こした作品です。その最大の理由は、美しさへの執着と道徳的退廃の関連性をあからさまに描いた点にあります。
主人公ドリアン・グレイは、自身の肖像画に自身の老いと醜さを受け渡し、永遠の若さと美しさを手に入れます。しかし、その代償として、彼の魂は肖像画の中で醜く堕落していくことになります。この設定は、外見の美しさに執着することの危険性と、真の美しさは内面にあるべきであるというメッセージを明確に示しています。
###
耽美主義と退廃主義の影響
「ドリアン・グレイの肖像」は、19世紀後半に流行した耽美主義と退廃主義の影響を強く受けています。耽美主義は、芸術至上主義を掲げ、道徳や社会規範よりも美の追求を重視する思想です。退廃主義は、退廃的な美意識や快楽主義、世紀末的な不安感を特徴としています。
作中では、華麗な文体や洗練された会話、耽美的な美術品や装飾品などがふんだんに描写され、耽美主義的な美意識が表現されています。また、ドリアンの快楽主義的な生活や道徳的退廃は、退廃主義的なテーマを反映しています。
###
同性愛の暗示と社会からの批判
「ドリアン・グレイの肖像」は、当時の社会ではタブーとされていた同性愛を暗示的に描いていると解釈されることもあります。例えば、ドリアンが魅了される人物は、ほとんどが男性であり、彼らとの関係は、強い感情や欲望を伴うものとして描かれています。
この同性愛的要素が、当時の社会からの激しい批判を招いた一因となりました。ワイルド自身も、同性愛の罪で有罪判決を受け、社会的にも literary 的にも失墜することになります。
###
芸術と現実の境界線
「ドリアン・グレイの肖像」は、芸術と現実の複雑な関係についても問いかけています。ドリアンにとって、肖像画は単なる絵画ではなく、彼自身の魂や人生を映し出す鏡のような存在となります。そして、彼は肖像画に現実逃避し、自身の罪悪感から逃れようとします。
このことから、芸術が現実から乖離した存在ではなく、むしろ現実と密接に関わり、時には現実を凌駕するほどの影響力を持つ可能性が示唆されています.