60代のためのアリエリー「予想どおりに不合理」
行動経済学への入り口
ダン・アリエリー著「予想どおりに不合理」は、行動経済学という分野を一般読者にもわかりやすく紹介した画期的な書籍です。行動経済学は、伝統的な経済学が前提とする「人間は常に合理的である」という考え方に疑問を投げかけ、人間の心理的なバイアスが経済的な意思決定にどのように影響するかを研究します。この本は、私たちが日常で行う選択が、必ずしも合理的ではないことを、様々な実験を通して明らかにしています。
60代における意思決定の重要性
60代は人生における大きな転換期です。定年退職を迎える人も多く、これまでとは異なる生活様式やお金の使い方を検討する必要が出てきます。年金、医療費、介護、相続など、重要な意思決定が求められる場面も増えます。このような状況下で、自分の心理的なバイアスを理解し、より良い選択をすることは非常に重要です。
「無料」の魔力と相対性
本書では、「無料」という言葉が持つ強力な魅力について解説されています。人は無料のものに過剰に反応し、本来必要のないものでも無料であれば手に入れたくなってしまう傾向があります。また、私たちは物事を絶対的な価値ではなく、相対的な価値で判断する傾向があります。例えば、同じ商品でも、他の商品と比較することで、割高に感じたり、割安に感じたりします。60代においては、様々な商品やサービスを選択する場面が多いため、これらの心理的なバイアスを理解しておくことは、無駄な出費を抑え、賢い消費につながります。
所有効果と損失回避
人は自分が所有しているものを高く評価する傾向があります。これを所有効果といいます。また、何かを失うことへの恐れは、何かを得ることへの喜びよりも強い傾向があります。これを損失回避といいます。これらの心理は、投資や不動産売却など、大きな金額が動く意思決定において、特に影響を及ぼします。60代では、これまで築き上げてきた資産をどのように運用していくか、どのように次の世代に引き継いでいくかといった重要な選択を迫られます。所有効果や損失回避といったバイアスを理解することで、感情に流されず、冷静な判断を下す助けとなります。
社会規範と市場規範
私たちは、社会的な関係性の中で行動する際には、社会規範に基づいて行動します。例えば、友人からの頼み事を無償で引き受けたり、ボランティア活動に参加したりすることは、社会規範に基づく行動です。一方、市場規範は、金銭的な報酬を伴う取引において適用されます。本書では、これらの2つの規範が混在すると、時に予期せぬ結果が生じることを示しています。60代では、地域社会への貢献や家族との関係など、社会規範が重視される場面が増えます。社会規範と市場規範の違いを理解することで、人間関係におけるトラブルを避け、より円滑なコミュニケーションを築くことができます。
正直さと不正行為
本書では、人は必ずしも合理的ではなく、時に不正行為に手を染めてしまうことがあることを、様々な実験を通して明らかにしています。しかし、同時に、人は完全に不正直になるわけではなく、ある程度の正直さを保とうとする傾向があることも示しています。60代においては、信頼関係がこれまで以上に重要になります。正直さと不正行為に関する人間の心理を理解することで、自分自身を律するとともに、他人との信頼関係を築き、より良い人間関係を築くことができるでしょう。
選択アーキテクチャの重要性
本書では、選択肢の提示方法によって、人々の選択が大きく変わることを示しています。これを選択アーキテクチャといいます。例えば、臓器提供の意思表示において、オプトイン方式(意思表示をした人だけが臓器提供者となる)の国と、オプトアウト方式(意思表示をしなかった人だけが臓器提供者とならない)の国では、臓器提供率に大きな差があることが知られています。これは、選択アーキテクチャが人々の行動に大きな影響を与えることを示す一例です。60代では、様々な場面で選択を迫られます。選択アーキテクチャの概念を理解することで、より良い選択をし、より良い人生を送るためのヒントを得ることができるでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。