50代のためのリースマン「孤独な群衆」
50代における社会と自己の変遷
50代は人生における大きな転換期を迎える時期です。長年勤めた会社を退職する人、子どもの独立によって生活環境が変化する人、親の介護が始まる人など、様々な変化を経験します。これらの変化は社会との関わり方や自己認識に大きな影響を与えます。長年所属していた組織から離れることで、社会における自分の役割や存在意義を見失ってしまう人も少なくありません。また、家族関係の変化によって、これまで当然と思っていた人間関係が変化し、孤独感を感じやすくなります。このような50代の社会と自己の変遷を考える上で、リースマンの「孤独な群衆」は重要な示唆を与えてくれます。
「孤独な群衆」における伝統指向型、内部指向型、他人指向型
「孤独な群衆」では、社会の人格類型を伝統指向型、内部指向型、他人指向型という3つの類型に分類しています。伝統指向型は、古くからの慣習や伝統を重視し、共同体における自分の役割を自覚することで安定を得るタイプです。内部指向型は、自分の内面的な価値観や目標に基づいて行動し、他人の評価に左右されないタイプです。他人指向型は、周りの人の期待や反応を敏感に察知し、周囲に同調することで安心感を得るタイプです。リースマンは、近代化が進むにつれて、伝統指向型から内部指向型、そして他人指向型へと社会の人格類型が変化してきたと分析しています。
50代と他人指向
高度経済成長期に青春時代を過ごした50代は、他人指向型の傾向が強い世代と言われています。企業戦士として組織の目標達成に邁進し、同僚との協調性を重視してきた彼らは、周りの期待に応えることで自分の価値を見出してきた側面があります。しかし、50代になると、組織における役割が変化したり、定年退職によって組織から離れたりするなど、これまでとは異なる状況に置かれることになります。このような変化の中で、他人指向型の価値観は必ずしも有効に機能するとは限りません。他者の期待に応え続けることに疲弊したり、自分の本当の価値を見失ったりする可能性があります。
「孤独な群衆」が50代に提供する気づき
「孤独な群衆」を読むことで、50代は自分自身の行動様式や価値観を客観的に見つめ直すことができます。自分がどの類型に当てはまるのか、また、どのような状況でどの類型の特徴が顕著に現れるのかを分析することで、自己理解を深めることができます。特に、他人指向型の傾向が強い50代にとっては、他者の期待に応えることだけが人生の目的ではないことに気づくきっかけとなるでしょう。自分自身の内面的な価値観や目標を見つめ直し、これからの生き方を考える上で、「孤独な群衆」は貴重な示唆を与えてくれます。
現代社会における「孤独な群衆」の意義
SNSの普及などにより、現代社会は人との繋がりを保ちやすくなった一方で、他者の視線を常に意識しなければならない状況とも言えます。「孤独な群衆」は、このような現代社会における人間関係の複雑さを理解する上でも役立ちます。他人の承認欲求に囚われずに、自分らしく生きるためのヒントを見つけることができるでしょう。50代だけでなく、あらゆる世代の人々にとって、「孤独な群衆」は現代社会を生き抜くための羅針盤となる可能性を秘めています。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。