40代のためのプラトン「メノン」
徳は教えられるか
プラトンの初期対話篇である「メノン」は、ソクラテスとメノンという富裕なテッサリア人の青年との対話を通して、「徳は教えられるか」という問いを追求する作品です。一見すると古代ギリシャの哲学的議論に終始するように見えますが、その内容は現代社会、とりわけ人生における転換期を迎えつつある40代の人々にとっても、深く考えさせられる示唆に富んでいます。
無知の知と探求の重要性
メノンは冒頭、徳とは何かをソクラテスに問います。しかしソクラテスは、自分が徳を知らないと告白し、メノンに徳の定義を問いかけます。メノンは様々な定義を提示しますが、ソクラテスは巧みな問答によってその矛盾を次々と指摘していきます。この過程で、メノンは自分が徳について何も知らないということに気づかされます。これはソクラテスの有名な「無知の知」を体現する場面です。40代は、これまでの経験からある程度の知識や地位を築いていることが多い世代です。しかし、「メノン」を読むことで、自分が本当に知っていることは何なのか、改めて問い直すきっかけを得られるでしょう。そして、無知を自覚することこそが、真の知への探求の第一歩であることを認識できるはずです。
想起説と潜在能力の発掘
徳は教えられるのかという問いに対し、ソクラテスは「想起説」を展開します。これは、私たちの魂は生まれる前からすべての知識を備えており、学習とは想起によってそれらを思い出すプロセスに過ぎないという考え方です。ソクラテスは、幾何学の問題を解けない奴隷少年に適切な質問を投げかけることで、少年が自力で解答を導き出す場面を提示し、想起説を例証します。この場面は、私たちが既に内面に持っている潜在能力の大きさを示唆しています。40代は、人生の折り返し地点に差し掛かり、今後のキャリアや人生設計について深く考える時期でもあります。過去の経験にとらわれず、自分の中に眠る可能性を信じて、新たな挑戦に踏み出す勇気を「メノン」から得られるかもしれません。
正しい意見と知識の違い
ソクラテスは、真の知識とは、単なる正しい意見を根拠づける論理的思考によって裏付けられたものであると主張します。正しい意見は、状況が変われば容易に覆されてしまう可能性がありますが、真の知識は揺るぎない確固たるものです。40代は、様々な情報が溢れる現代社会において、何が真実で何がそうでないのかを見極める力を養うことが求められます。「メノン」を読むことで、情報に流されることなく、物事を批判的に捉え、自分自身の考えを構築していくことの重要性を改めて認識できるでしょう。
徳の実践と探求の継続
「メノン」は、徳とは何か、徳は教えられるのかという問いに対する明確な答えを提示することなく終わります。しかし、この問いに対する探求こそが重要であり、その過程で私たちは真の知に近づいていくというメッセージが込められています。40代は、人生における様々な経験を通して、自分自身の価値観や信念を確立していく時期です。徳とは何かを問い続ける姿勢、そしてそれを実践していく努力こそが、豊かな人生を送るための鍵となるのではないでしょうか。「メノン」を読むことで、この探求の旅に出るための羅針盤を手に入れることができるかもしれません。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。