30代のためのアウグスティヌス「告白」
「自己」探求の旅路、回心そして成熟
30代は人生における大きな転換期を迎える時期です。キャリア、結婚、子育てなど、様々なライフイベントを通して、自分自身の人生と向き合い、将来への展望を描く時期でもあります。アウグスティヌスの「告白」は、まさにこの「自己」と向き合うための深遠な洞察を与えてくれる書物です。アウグスティヌスは、自身の青年期からキリスト教への回心に至るまでの葛藤と苦悩、そして信仰に至るまでの内面の変遷を赤裸々に綴っています。
迷いと模索、共感できる青春の軌跡
アウグスティヌスは、若い頃に放蕩な生活を送っていました。窃盗や梨盗みといった悪事を働き、肉欲的な快楽に溺れるなど、道徳的に逸脱した日々を送っていたことを告白しています。これは、現代の若者が抱える迷いや葛藤、そして理想と現実のギャップに苦しむ姿と重なる部分があるでしょう。30代になると、過去の自分の選択や行動を振り返る機会が増えます。「告白」を読むことで、アウグスティヌスが自身の過去の過ちと真摯に向き合う姿を通して、自分自身の人生を省みるきっかけを得ることができるでしょう。
時間と記憶、そして永遠への問い
「告白」では、時間の本質についても深く考察されています。アウグスティヌスは、過去、現在、未来という時間の流れを、人間の意識の中にある「記憶」「直観」「期待」として捉えています。これは、過ぎ去った時間への郷愁や、未来への不安を抱える30代にとって、非常に示唆に富む視点です。また、有限な時間の中で生きる人間にとって、永遠という概念はどのように理解されるべきなのか、という問いも投げかけられています。
神への渇望、普遍的な人間の欲求
アウグスティヌスは、人間には生まれつき神を求める心があると述べています。この「神への渇望」は、キリスト教徒に限らず、すべての人間が持つ普遍的な欲求として描かれています。30代になると、人生の意味や目的について深く考える機会が増えます。「告白」は、この根源的な問いに向き合い、自分自身にとっての「神」、あるいは「究極的な価値」とは何かを考える上で、大きなヒントを与えてくれるでしょう。
信仰の道、内なる声に耳を澄ます
アウグスティヌスは、様々な哲学や宗教を遍歴した後、最終的にキリスト教に帰依します。この回心の過程は、理性的な思考だけでなく、内なる声、直感、そして神の恩寵といった非合理的な要素も大きく関わっています。現代社会において、合理性や効率性が重視される中で、「告白」は、内なる声に耳を澄ませ、自分自身の真実と向き合うことの重要性を改めて教えてくれます。
母モニカとの関係、家族への愛
「告白」には、アウグスティヌスの母モニカが登場します。敬虔なキリスト教徒であったモニカは、放蕩な生活を送る息子を深く愛し、その回心を祈り続けていました。アウグスティヌスとモニカの親子関係は、家族の愛の深さと、信仰の力強さを示す感動的なエピソードとして描かれています。30代になり、親としての責任や、親との関係性を見つめ直す時期において、この物語は深い共感を呼ぶでしょう。
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読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。