20代のためのプラトン「クリトン」
なぜ20代は「クリトン」を読むべきなのか
20代は人生における大きな転換期であり、自己形成の重要な時期です。進路選択、人間関係、社会との関わりなど、様々な場面で重要な決断を迫られます。そのような中で、自分自身の価値観や信念を確立し、倫理的な判断基準を持つことが不可欠となります。プラトンの初期対話篇である「クリトン」は、まさにそうした倫理的な問題を深く掘り下げた作品であり、20代が自分自身の人生について深く考えるための格好の材料を提供してくれます。
「クリトン」におけるソクラテスの選択:法への忠誠
「クリトン」は、死刑判決を受けたソクラテスが、友人クリトンから脱獄を勧められるものの、それを拒否し、法に従って死を選ぶという物語です。クリトンは、ソクラテスが不当な判決を受けたこと、逃亡は容易であること、家族や友人を見捨てるべきではないことなどを訴え、脱獄を強く勧めます。しかし、ソクラテスはこれらの訴えに耳を傾けながらも、最終的には法に従うことを選びます。
ソクラテスの選択の根底にあるのは、法への深い敬意と、国家との契約という考え方です。ソクラテスは、アテネという国家で生まれ育ち、その恩恵を受けてきたことを認めています。そして、国家の法に従うことは、国家との契約を守ることであり、市民としての義務であると考えています。たとえ不当な判決を受けたとしても、法を破ることは国家を裏切ることになり、正義に反するとソクラテスは主張します。
「クリトン」が問いかけるもの:正義とは何か、国家とは何か
ソクラテスの主張は、私たちに「正義とは何か」「国家とは何か」という根源的な問いを突きつけます。私たちは、どのような状況においても法に従うべきなのでしょうか。不当な法律や制度に対しては、抵抗したり変革を求めたりすることは許されないのでしょうか。国家への忠誠は、個人の権利や自由よりも優先されるべきなのでしょうか。
「クリトン」は、これらの問いに対する明確な答えを与えてくれるわけではありません。むしろ、ソクラテスとクリトンの対話を通して、読者自身がこれらの問題について深く考え、自分なりの答えを見つけることを促しています。
20代にとっての「クリトン」:倫理的な思考力を養う
20代は、社会に出て様々な人と関わり、様々な経験をする中で、自分自身の倫理観を形成していく時期です。「クリトン」を読むことは、倫理的な問題について深く考え、自分自身の判断基準を確立するための貴重な機会となります。
ソクラテスの主張に共感する人もいれば、反論する人もいるでしょう。重要なのは、一方的な結論に飛びつくのではなく、ソクラテスとクリトンの議論を丁寧に追いかけ、それぞれの立場を理解しようと努めることです。そして、自分自身だったらどのような選択をするのか、なぜそう考えるのかを深く考えてみることです。
「クリトン」は、2000年以上前に書かれた作品ですが、現代社会においても決して色褪せることのない普遍的なテーマを扱っています。20代が「クリトン」を読むことは、倫理的な思考力を養い、より良い社会を築くための第一歩となるでしょう。
Amazonでクリトン の本を見る
読書意欲が高いうちに読むと理解度が高まります。